笑って歩こうよ

ASKAによる通算13枚目のシングルとしてリリースされた楽曲が「笑って歩こうよ」です。このシングルは、2021年7月1日にデジタル形式での先行配信が行われ、同月14日には12cmCDとして発売されました。さらに、同年8月14日からは各種ストリーミングサービスでの配信も開始されています。CDシングルとしては、前作にあたる「歌になりたい/Breath of Bless 〜すべてのアスリートたちへ」からおよそ1年8ヶ月ぶりの発表となりました。

本作に収録されている楽曲は、タイトル曲の「笑って歩こうよ」とカップリングの「プラネタリウム」の2曲であり、いずれもラブソングとして制作されています。これらの楽曲は、比較的以前の2014年から2015年頃にかけて作られたものです。ASKAは、自身の音楽活動において、40代から50代にかけてはラブソングを歌うことに一種の抵抗感を抱いていた時期があったことを明かしています。しかし、60代という新たな年代を迎えたことで、その感覚がリセットされ、若い頃のように自然で純粋な気持ちでラブソングを歌えるようになったと述べています。特に、2020年にリリースしたアルバム『Breath of Bless』に収録された「どうしたの?」という楽曲が、再びラブソングの世界に踏み出す上で重要なきっかけを与えてくれたことも語っています。

それぞれの楽曲について掘り下げてみましょう。タイトル曲「笑って歩こうよ」は、1970年代の音楽を彷彿とさせるメロディーラインが印象的です。この楽曲には、現代社会において当たり前の感情表現さえ難しくなっている状況を踏まえ、「笑う」という行為そのもの、そして自分が何を大切にして生きていくべきか、といったメッセージが込められています。ASKA自身、この楽曲は明確な男女間のラブソングであると位置づけています。発表当時、新型コロナウイルスの影響により、集まって笑うことが制限されるような社会全体のムードがあった中で、ASKAはその状況に着目し、こんな時代だからこそ皆で笑うことの大切さを歌う楽曲を届けたいという思いからリリースされたという背景があります。編曲は松本晃彦氏と澤近泰輔氏が共同で手掛けており、ASKAの言葉によれば、松本氏が楽曲の基本的な構造となる編曲を行い、その上に澤近氏が細部を装飾していく形で完成したとのことです。ASKAは本作に対して非常に強い自信を示しており、もし1990年代に発売されていれば、セールス面でダブル・ミリオン（200万枚）を超える作品になっていただろうと述べています。この楽曲は、シングルリリースに先駆け、2021年6月27日に放送されたラジオ番組『ASKA Terminal Melody』（TOKYO FM）で初めてリスナーに届けられました。ミュージックビデオは石井貴英氏が監督を務め、女優の尾野真千子氏が出演しています。尾野氏は、自身の思い出が詰まった街に別れを告げる女性の心情を演じており、これは石井監督からの直接のオファーによって実現したものです。

一方、カップリング曲「プラネタリウム」もまたラブソングであり、ASKAがラブソングに対する抵抗感を克服し、再び自然に歌えるようになった過程を示す楽曲の一つと位置づけられています。前述の通り、ASKAは若い頃は無理なくラブソングを歌えていましたが、40代や50代では難しさを感じていました。しかし60代になり考え方が変化し、再び抵抗なく歌えるようになったのです。「プラネタリウム」は、そのような心境の変化を経て、以前のように自然体でラブソングに取り組めるようになったことを実感させた楽曲であるとASKAは語っています。

本作に参加したミュージシャンとしては、「笑って歩こうよ」では澤近泰輔氏がプログラミングを担当しました。「プラネタリウム」では、鈴川真樹氏がギターとプログラミング、藤山祥太氏がプログラミングを担当しています。

このシングルに収録された両楽曲は、後にリリースされたASKAのアルバム『Wonderful world』にも収められています。

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