笑福亭希光

笑福亭 希光

1979年7月6日生まれ、本名を船越哲志という。現在、落語芸術協会に所属し、九代目笑福亭鶴光に師事する二ツ目の落語家である。多岐にわたる前職の経験を活かした独自の活動を展開している。

異色のキャリアパス

落語家を志す以前、希光は他の舞台で活動していた。大学で経営学を学ぶ傍ら、1999年に仁田和伸と漫才コンビ「アイムスクリーム」を結成し、プロの世界へ足を踏み入れた。コンビ活動中には、結成間もない時期に初舞台を踏んだのを皮切りに、2001年には歴史ある浪花座への出演を果たすなど、関西を中心に経験を積んだ。2004年には「漫才アワード」の敗者復活戦に出場するなど実力を示し、さらに京都で行われた義経ゆかりの地を巡るバスツアーではガイド兼司会をレギュラーで務めるなど、活動の幅を広げた。2005年には初めて単独ライブを開催するなど精力的に活動を続けるが、2006年にコンビを解散。新たな道を求め、原動機付自転車を4日かけて走らせ、活動拠点を大阪から東京へと移すという、並々ならぬ行動力を見せた。

東京へ移った翌年、彼は吉本新喜劇の座員となる。お笑いの殿堂であるルミネtheよしもとの舞台に立つなど、役者としての道を歩んだが、2013年に退団。

落語家への転身

吉本新喜劇を退団した2013年、希光は長年の経験を経てついに落語家を志す。九代目笑福亭鶴光の門を叩き、「希光」という名前で前座として修行を開始した。寄席での日々の高座と並行して様々な経験を積むこと約4年、2017年8月には真打に次ぐ階級である二ツ目に昇進し、更なる飛躍を目指すこととなる。

若手落語家としての評価と受賞歴

二ツ目昇進後、彼はその実力を数々の場で証明している。2018年には「第10回前橋若手落語家選手権」で優勝。そして2024年8月には「第35回北とぴあ若手落語家競演会」で栄えある大賞に輝いた。さらに、2025年3月には「第24回さがみはら若手落語家選手権」で準優勝に輝くなど、複数の若手落語家コンクールで優秀な成績を収めており、その確かな技量と将来性が高く評価されている。

「芸協カデンツァ」の中心メンバーとして

希光は、落語芸術協会に所属する若手落語家10名で結成されたユニット「芸協カデンツァ」の一員としても精力的に活動している。このユニットは、かつて注目を集めた若手落語家集団「成金」の実質的な後継とも言われる存在である。

特に、2024年6月に開催された「芸協カデンツァ 初夏の大合奏」公演では、自らの吉本新喜劇での経験を活かし、新喜劇作家による脚本を用いた「カデンツァ新喜劇」を企画し、中心となって上演を成功させた。この試みは、落語の枠を超えた斬新な企画として大きな話題を呼んだ。この公演を取材した桂米助にも高く評価され、同年12月の浅草演芸ホールの上席後半公演では、大喜利としてカデンツァ新喜劇が催される運びとなり、連日大入満員となるほどの盛況を見せた。

多彩な活動と特技

落語家として高座を務める傍ら、希光は多方面で才能を発揮している。2020年2月にギャラクシー賞テレビ部門フロンティア賞を受賞したYouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」の制作にも深く関わった。六代目神田伯山真打昇進襲名披露興行において、通常の撮影クルーが入ることのできない寄席の楽屋に、桂鷹治、古今亭今いちと共にハンディカメラを持ち込み、29日間にわたり舞台裏の様子を記録し続けた。この映像は、普段見られない落語家の素顔や興行の舞台裏を捉え、高い評価を得た。

また、彼の特技の一つにバイオリン演奏がある。この特技を活かし、落語芸術協会所属の落語家、講談師で構成されるハワイアンバンド「アロハマンダラーズ」ではベーシストとしても活動しており、音楽の分野でもその才能を発揮している。

メディアへの出演も行っており、2021年にはテレビ番組「僕ら的には理想の落語」で落語監修を担当し、2024年10月にはテレビ東京のドラマ「Qrosの女 スクープという名の狂気」第3話に神谷亭遊菊役で出演するなど、映像作品にも携わっている。

漫才師、吉本新喜劇座員を経て落語家となった異色のキャリアは、彼の落語や企画に独自の視点や表現力をもたらしている。若手落語家としての確かな実力に加え、「芸協カデンツァ」での企画力や多分野での活動を通じて、今後の活躍が益々期待される落語家である。

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