笠井信一

笠井信一：日本の地方行政と社会福祉に貢献した内務官僚

笠井信一（1864-1929）は、明治から大正期にかけて活躍した日本の内務官僚にして政治家である。その経歴は、地方行政における手腕と、後の社会福祉政策の先駆けとなる制度創設への貢献によって彩られている。

静岡県に生まれた笠井は、静岡県立静岡中学校、第一高等学校を経て、1892年に帝国大学法科大学を卒業。翌年、内務省に入省すると、警保局に配属され、キャリアをスタートさせた。着実なキャリアアップを歩み、警保局監獄課長などを経て、各地の県庁で要職を歴任する。山形県参事官、岩手県警察部長、高知県書記官、台湾総督府事務官、台南県書記官、岐阜県書記官、新潟県書記官、新潟県第一部長、熊本県第一部長と、多様な地域での行政経験を積んだ。

1907年、岩手県知事に就任。その手腕が認められ、1913年には地元静岡県知事に就任。これは地元出身者としては初の快挙であった。その後、岡山県知事を経て、1919年には北海道庁長官に就任するなど、地方行政におけるリーダーシップを発揮した。

笠井の功績は地方行政のみに留まらない。1917年、岡山県知事在任中に、後の民生委員制度の先駆けとなる「済世顧問制度」を制定した。これは、社会福祉の向上に大きく貢献する画期的な制度であり、笠井の社会問題への関心の深さを示している。

さらに、笠井は政治面でも活躍した。1921年には貴族院勅選議員に任命され、交友倶楽部に所属し、政治家としてのキャリアを歩んだ。

笠井の生涯は、地方行政における豊富な経験と、社会福祉への貢献、そして政治家としての活動によって構成されている。彼は、近代日本の地方行政の礎を築き、社会福祉の進展に寄与した重要な人物と言えるだろう。その功績は、今日においても高く評価されている。

経歴のまとめ

静岡県出身
帝国大学法科大学卒業
内務省入省後、各地の県庁で要職を歴任（警保局監獄課長、山形県参事官、岩手県警察部長、高知県書記官、台湾総督府事務官、台南県書記官、岐阜県書記官、新潟県書記官、新潟県第一部長、熊本県第一部長など）
岩手県知事
静岡県知事（地元出身者として初）
岡山県知事（済世顧問制度制定）
北海道庁長官
貴族院勅選議員

栄典

笠井信一の功績は、数々の栄典によって認められた。正四位、勲三等瑞宝章、大礼記念章、勲二等瑞宝章などを受章している。

著作

笠井信一は、『笠井信一集』を著している。この著作は、彼の思想や政策、そして生涯を理解する上で貴重な資料となっている。

参考文献

笠井信一の生涯や活動を知るためには、以下の参考文献が役立つ。

秦郁彦編『日本近現代人物履歴事典』東京大学出版会、2002年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』1990年
『日本の歴代知事 第1巻』歴代知事編纂会、1980年
『新訂 政治家人名事典 明治～昭和』日外アソシエーツ、2003年

笠井信一は、日本の近代化に貢献した重要な人物の一人である。その生涯と功績は、後世への貴重な教訓となるだろう。

もう一度検索