笠井叡

笠井叡のプロフィールと舞踏における影響力

笠井叡（かさい あきら）は、1943年11月25日生まれの舞踏家であり振付家、さらにオイリュトミストとしても活動しています。三重県出身で、明治学院大学の経済学部を卒業。彼の父、笠井寅雄は札幌高等裁判所で裁判官を務めていましたが、洞爺丸事故で悲しい晩年を迎えました。

学びの旅

笠井は若い頃から様々な舞踊のスタイルを学びました。江口隆哉からモダンダンス、宮操子からは同様にモダンな表現を、またジャン・ヌーボにパントマイム、千葉昭則からはクラシック・バレエを学ぶ過程で、彼の独自のスタイルを確立していきました。その後、大野一雄のもとで舞踏の道を行くことになり、そこで土方巽と出会い、前衛舞踊活動を展開します。

彼の舞踏作品の一つ「タンホイザー」など、独特な表現を含む作品を持ち、ヨガを学ぶことも彼の身体の表現に大きな影響を与えています。特に神秘主義や神智学の探求に深く関与し、シュタイナーやグルジエフ、バタイユなどの理論を吸収しました。その成果として「天使論」という著作も存在します。

ドイツでの修行

1979年から1985年にかけてドイツに留学し、シュトゥットガルトのオイリュトメウムで学びました。この期間は、エルゼ・クリンクに指導を受け、オイリュトミーと神智学を深める貴重な時となりました。笠井は帰国後もオイリュトミーと舞踏の両方で活動を続け、1971年に自宅の庭に「天使館」と名付けたスタジオを開設し、そこを拠点に多くの人々に舞踏を教えています。

受賞歴と著作

アーティストとしての活動は高く評価されており、2009年にはニムラ舞踊賞を受賞、さらに2014年には『日本国憲法を踊る』で文部科学大臣賞の舞踊部門も受賞しています。また、著作も非常に多岐にわたり、「天使論」や「聖霊舞踏」など、彼の思想や舞踏に対するアプローチを示すものが多数存在します。

ダンス思想と影響

笠井は「舞踏とは身体に対する態度である」と強調し、単なる形やスタイルではなく、意識を変容させるプロセスとしての舞踏を捉えています。著名な舞踏家ニジンスキーを例に挙げ、舞踏とバレエの違いを示しています。この考え方は多くの舞踏家に影響を与え、彼自身が「舞踏界のニジンスキー」と呼ばれる所以でもあります。

彼の作る作品には、よく似た姿の女性ダンサーを意図的に配置するなどのスタイルが見られ、その独創性が光ります。笠井はまた、ペシミズムの視点からもダンスを考え、さまざまな哲学者との交流を持っていました。著名な詩人や芸術家との親交もあり、彼の影響は舞踏だけにとどまらず、広範な文化に及んでいます。

現代舞踏における位置づけ

笠井叡は、舞踏の進化に多大な貢献をしてきた重要な存在です。彼の思想や作品は、舞踏界のみならず広く文化全般においても影響を与え続けています。これからの舞踊芸術における彼の役割と影響に、今後も注目が集まることでしょう。

もう一度検索