笠原美智子

笠原美智子は、1957年長野県茅野市に生まれ、美術評論家、写真評論家、学芸員、キュレーターとして、日本の美術界において重要な役割を担ってきました。1979年に長野県諏訪二葉高等学校を卒業後、1983年に明治学院大学社会学部社会学科を卒業。その後、1987年にシカゴのコロンビア大学で写真専攻の修士課程を修了し、専門的な知識と国際的な視野を培いました。

帰国後の1989年、東京都写真美術館の学芸員としてキャリアをスタートさせ、2002年には東京都現代美術館の学芸員も経験。2006年には再び東京都写真美術館に戻り、事業企画課長を務めました。その間、数々の重要な写真展を企画し、日本の写真表現の発展に大きく貢献しました。2021年からは、ブリヂストン美術館副館長を経て、現在は長野県立美術館の館長として、地域文化の振興にも尽力しています。

笠原の企画した主要な展覧会には、以下のようなものがあります。

東京都写真美術館での企画
「私という未知へ向かって　現代女性セルフ・ポートレイト」（1991年）
「アメリカン・ドキュメンツ　社会の周縁から」（1991年）
「発言する風景」（1993年）
「はるかな空の下から　日本の現代写真」（1993年）
「ジェンダー　記憶の淵から」（1996年）
「アルフレッド・スティーグリッツとその仲間たち」（1997年）
「ラヴズ・ボディ　ヌード写真の近現代」（1998年）
「ポラロイド・コレクション　アメリカ　写真の世紀」（2000年）
「手探りのキッス　日本の現代写真」（2001年）
「風景論　日本の新進作家」（2002年）

これらの展覧会は、写真表現の可能性を追求し、社会的なテーマやジェンダーの問題にも積極的に取り組んだものが多く、当時の美術界に大きな影響を与えました。

また、2005年には、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ美術展日本館コミッショナーとして、「石内都　マザーズ 2000-2005 未来の刻印」展を開催。この展覧会は、2006年に「石内都　マザーズ」として東京都写真美術館でも開催され、国内外で高い評価を受けました。

笠原は、執筆活動にも力を入れており、多数の著作や共著を発表しています。主な著作には、以下のようなものがあります。

著作
『ヌードのポリティクス　女性写真家の仕事』（筑摩書房、1998年）
『写真、時代に抗するもの』（青弓社、2002年）
* 『ジェンダー写真論 1991-2017』（里山社、2018年）

これらの著作では、写真表現におけるジェンダーや社会的な視点を深く掘り下げており、美術史や写真史研究において重要な文献となっています。

また、翻訳家としても活躍しており、ジョージ・レヴィンスキーの『ヌードの歴史』やジョン・バージャーの『見るということ』など、海外の重要な美術理論書を翻訳し、日本の美術界に紹介しました。

笠原美智子は、写真表現の可能性を追求し、社会的なテーマに積極的に取り組む姿勢を通じて、日本の美術界に多大な貢献をしてきました。その幅広い知識と卓越したキュレーション能力は、今後の美術界においても大きな影響を与え続けるでしょう。

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