笠置橋 (木曽川)

笠置橋（かさぎばし）

笠置橋は、岐阜県の南東部に位置する恵那市において、悠久の歴史を刻む木曽川に架けられた重要な交通網の一端を担う橋梁です。この橋は岐阜県道68号恵那白川線の一部を構成しており、恵那市長島町久須見と笠置町姫栗という両岸を結んでいます。現在、私たちが目にしている笠置橋は、時代の変遷を経て架け替えられた二代目の構造物です。

現在の笠置橋は、1966年（昭和41年）に供用が開始されました。その規模は、全長が143.8メートルに及び、橋全体の幅員は7.5メートルです。この幅員の内訳としては、車両が通行する車道部分が5.5メートル、そして歩行者が安全に通行できる歩道部分が2.0メートル確保されています。この二代目橋の完成により、地域の交通利便性は大きく向上しました。

笠置橋の歴史を遡ると、その誕生には地域住民の切実な願いと、当時の大規模開発が密接に関わっています。初代の笠置橋が架けられるきっかけとなったのは、1924年（大正13年）に完成した大井ダムの建設でした。木曽川を堰き止めて造られたこのダムによって水位が上昇し、従来自動車による往来に利用されていた渡し舟による交通が困難になったのです。生活に不可欠な渡船機能が損なわれたことで、地域住民は大変な不便を強いられることになりました。

この状況を改善するため、周辺の町村は一体となって岐阜県に対し、木曽川への架橋を強く要望しました。住民の安全な往来と地域経済の維持にとって、新しい橋の必要性は喫緊の課題だったのです。こうした熱意ある嘆願が実を結び、大井ダム完成からほどなくして、初代の笠置橋の建設が決定されました。

そして、大正末期にあたる1926年（大正15年）に、初代の笠置橋が無事完成しました。この初代橋は、全長約130メートルの鉄筋で補強された吊橋という構造を採用していました。当時の技術水準においては比較的大規模かつ先進的な橋梁であり、地域の交通体系に革新をもたらしました。さらに特筆すべきは、この初代橋の建設費の一部を、大井ダムの運用主体であった大同電力株式会社（現在の関西電力株式会社の前身の一つ）が負担したという点です。記録によると、同社は約20%の建設費用を拠出したとされており、ダム建設がもたらした地域への影響に対する、事業者の一定の貢献を示すものと言えます。

初代橋はその役目を終え、現在の二代目笠置橋へと引き継がれましたが、地域の交通を支えるという本質的な役割は変わっていません。現在の橋も、地域の生活や産業を支える重要なインフラとして、日々の交通を円滑にしています。

また、笠置橋は交通の要衝であるだけでなく、地域の歴史や文化とも結びつきがあります。特に、初代の笠置橋は、文学作品を原作とした有名な日本映画のロケーションとして使用された過去があります。1949年（昭和24年）に公開された吉川英治原作の映画「青い山脈」では、まだ現役だった旧橋が撮影に使われ、銀幕を通して全国にその姿が紹介されました。これは、笠置橋が単なる構造物としてだけでなく、人々の記憶や文化的な記録の一部にもなっていることを示しています。

岐阜県恵那市に位置する笠置橋は、大井ダム建設という歴史的背景から生まれ、地域住民の強い願いによって実現した初代橋の物語、そして現在の堅牢な二代目橋による日々の交通支援、さらに映画ロケ地としての文化的側面まで、多岐にわたる側面を持つ橋と言えるでしょう。それは、恵那の歴史と現代を結びつけ、木曽川の流れと共に地域を見守り続けている存在なのです。

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