第一の性

『第一の性』（だいいちのせい）

概要

『第一の性』は、著名な作家三島由紀夫による評論・随筆であり、1962年から1964年にかけて雑誌に連載され、1964年に単行本として出版されました。この作品は男性に対する深い考察を示すもので、特に「男の存在理由」や「男の偉大さ」をテーマにしています。タイトルはボーヴォワールの『第二の性』を意識したものであり、ユーモアと逆説を交えた文章が特徴的です。目的は、特に若い女性に向けた男性に関する考察を展開することです。

発表経過

『第一の性』は、1962年に雑誌『女性明星』の創刊号から連載が始まり、1964年に単行本として刊行されました。連載は「第一の性――男性研究講座」と「第一の性――男性人物講座」の2つのセクションに分かれており、後にそれぞれ「総論」と「各論」としてまとめられました。

内容

総論

本書の総論部分では、「男はみな英雄」、「男らしさ」、「清潔さ」、「デリカシィ」など、13のテーマに分けて男性についての考察が展開されています。三島は冒頭で「男は一人のこらず英雄であります」と述べ、ボーヴォワールの見解に対抗する形で男の本質を探っています。ここには、男性の持つ特性や価値観についての洞察が多く盛り込まれています。

各論

次に、各論では具体的な男性人物に焦点を当てて解析が行われ、エジンバラ公から三島自身を含むさまざまな男性が取り上げられています。これにより、著者は個々の男性の特徴や影響を論じ、最後に自らについても考察しています。

評価と影響

『第一の性』は、男性の特性を解明する試みとして高く評価されていますが、その一方で、著者は女性に対する理解を促す意図も持っています。中野裕子は、三島が描く「男らしさ」が単なる理想像ではなく、より本質的なものを提示していると解説しています。また、田中美代子は、三島が強調する男性の「英雄性」が、現代においては「女性の平等主義」によって脅かされているとの見解を示しています。

収録作品と出版経歴

本書は、集英社から何度かにわたり出版され、さまざまな装丁や解説が追加されてきました。文庫版や全集版も存在し、その都度新たな読者を魅了しています。また、関連書籍として女性に対する考察をテーマにした『反貞女大学』もあります。

結論

『第一の性』は、三島由紀夫が男性の本質を探求し、特に女性に対して理解を求める一冊として、今なお重要な位置づけを持つ作品です。男性の存在意義や役割について、深く考察する機会を与えてくれる名著です。

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