第一次戦略兵器制限交渉

第一次戦略兵器制限交渉（SALT I）

第一次戦略兵器制限交渉（SALT I）は、アメリカとソ連との間で行われた重要な軍備制限交渉であり、互いの核兵器の保有数を制限することを目的としていました。この交渉は1969年に始まり、1972年5月に正式に合意が成立するまでの数年間にわたって展開されました。

背景

冷戦時代、アメリカとソ連は互いに核兵器を開発・生産する競争を繰り広げており、その結果、両国の核戦力は急速に増大していました。1980年代初頭には、両国の戦略核弾頭の数は数万に達し、この状況が続くことは国際的な安全保障上の大きな脅威となっていました。そこで、両国にとって軍備増強に歯止めをかける必要があったため、核兵器運搬手段に関する制限交渉が行われることになりました。

交渉の開始

交渉は1969年、フィンランドのヘルシンキで開始され、アメリカとソ連の代表団が互いの立場を調整するために数回にわたって会議を行いました。この交渉では、特に弾道ミサイルの発射装置や戦略的爆撃機、さらにSLBM（潜水艦発射弾道ミサイル）などが議題に上がりました。

合意内容

1972年5月、ついに交渉において合意が成立し、モスクワで公式に条約が調印されました。ただし、この合意は両国の弾道ミサイルの数量を追認するものであり、具体的な数量制限を設けることはありませんでした。そのため、アメリカのICBM（大陸間弾道ミサイル）は1,000基、SLBMは710基に制限される一方で、ソ連はICBMで1,410基、SLBMで950基を保有していました。

この結果、ミサイルの保有数はソ連の方が多く、アメリカにとっては戦略的に厳しい状況となりました。さらに、核弾頭のMIRV化（Multiple Independently targetable Reentry Vehicle、複数目標同時攻撃機能）に関する制限や数量については、全く触れられませんでした。このような点から、両国は引き続き、より厳しい制限を求める必要があると認識し、第二次戦略兵器制限交渉（SALT II）に着手することになりました。

結果と影響

SALT Iの結果として、新たな軍備管理の枠組みが生まれ、核兵器の制限に向けた第一歩が踏み出されたといえます。しかしながら、実際の軍備制限には限界があり、核戦力の地政学的バランスは依然として不安定でした。このことは、冷戦の継続的な緊張を象徴するものであり、後の交渉や国際関係の変化にも大きな影響を与えました。

また、SALT Iと同時に、弾道弾迎撃ミサイル制限条約も調印されており、これも両国の核戦力の運用に影響を与える要素となりました。戦略兵器の制限に向けた取り組みは、冷戦の終結へ向けた一つの道筋を映し出しているといえるでしょう。

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