第一種低層住居専用地域

第一種低層住居専用地域：静かで快適な住宅環境を守るための厳格な規制

第一種低層住居専用地域は、日本の都市計画法に基づく用途地域の一つで、良好な低層住宅地の環境保全を目的としています。13種類ある用途地域の中でもっとも厳しい規制が適用され、静かで快適な住環境の維持に大きく貢献しています。略して「一低層」と呼ばれることも多く、高級住宅街などに多く指定されています。

用途制限：住宅と限られた非住宅用途のみ許可

第一種低層住居専用地域では、建築可能な用途が厳しく制限されています。主な制限は以下の通りです。

許可される用途

住宅関連: 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿などは原則として許可されます。
兼用住宅: 住宅と併設する非住宅部分は、非住宅部分の床面積が50㎡以下、かつ建物の延べ面積の半分以下である必要があります。
小規模な非住宅: 一定の条件下で、以下の小規模な非住宅用途が認められます。ただし、いずれも規模や設備に制限があります。
事務所（ただし、汚物・危険物運搬車の駐車施設を敷地内に有するものは除く）
小規模な店舗（日用品販売、食堂、喫茶店など）
サービス業（理髪店、美容院、クリーニング取次店など）
小規模な工場・工房（パン屋、米屋、豆腐屋、アトリエなど。原動機出力は0.75kW以下）
学習塾、教室など
教育・福祉施設: 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、図書館、保育所、老人ホームなどは、原則許可されます。ただし、大学や専門学校などは除かれます。規模によっては、老人福祉センター、児童厚生施設なども制限を受けます。
公共施設: 郵便局（500㎡以下）、神社、寺院、教会、公衆浴場（風俗営業を除く）、診療所、近隣公園内の公衆便所などは許可されます。警察署や消防署などは許可されません。
インフラ関連施設: 電気通信、ガス、水道、下水道などのインフラ施設は、規模や設備に制限がありながら許可される場合があります。
建築物附属車庫: 車庫は、主建築物の延べ面積以下、かつ600㎡以下、1階建てである必要があります。また、公告対象区域内ではさらに厳しい制限があります。

許可されない用途

店舗、事務所、ホテル、旅館、遊戯施設、風俗施設、展示場、運動施設、病院（診療所を除く）、大学、高等専門学校、自動車教習所、税務署、警察署、消防署などは原則として許可されません。
危険物の貯蔵や処理、規模の大きい工場や倉庫なども禁止されています。

建ぺい率と容積率：建築可能な面積の制限

第一種低層住居専用地域では、建ぺい率と容積率が厳しく制限されています。

建ぺい率: 30%、40%、50%、60%のいずれかが都市計画で定められます。角地や防火地域内にある耐火建築物など、例外的に緩和される場合があります。
容積率: 50%、60%、80%、100%、150%、200%のいずれかが都市計画で定められます。前面道路の幅員が12メートル未満の場合は、さらに厳しい制限が適用されます。

その他の制限：高さ、日影、外壁後退など

第一種低層住居専用地域では、建物の高さ、日影、外壁後退距離などについても制限があります。

高さ制限: 10mまたは12mの絶対高さ制限が定められることが多く、隣地斜線制限の適用はありません。
日影規制: 軒の高さが7mを超える場合や3階建て以上の建物は、条例で指定された区域において日影規制の対象となります。
外壁後退距離制限: 敷地境界から建物の外壁までの距離を1mまたは1.5m離すよう定められる場合があります。
暴力団排除・風俗営業規制: 自治体の条例によっては、暴力団事務所や風俗営業所の設置が禁止されている場合があります。

まとめ：静かで快適な住宅環境を守るための重要な役割

第一種低層住居専用地域は、低層住宅地の良好な住環境を維持するために、建築物に関する様々な制限を設けています。これらの規制は、騒音や日照、プライバシーなどの問題を防ぎ、静かで快適な生活環境を確保する上で重要な役割を果たしています。高級住宅街などに多く指定されているのも、その効果の表れと言えるでしょう。ただし、規制内容の理解不足によるトラブルも発生しているため、建築を計画する際には、十分な知識と確認が必要です。

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