第九条 (映画)

映画『第九条』

『第九条』（Article9）は、2016年7月2日に公開された日本の長編映画です。本作は、日本国憲法の中でも特に重要な意味を持つ「第九条」の解釈や今後のあり方について、真正面から向き合った意欲作として制作されました。

概要

映画の中心となるのは、社会の様々な分野で働く12人の20代の若者たちです。彼らはある場所に集められ、憲法第九条をこのまま維持すべきか、あるいは時代の変化に合わせて改正・破棄すべきかという、日本社会にとって根源的な問いについて議論を深めていきます。この密室空間での若者たちの生々しいやり取りが、作品の大部分を占める密室劇として描かれています。

ストーリー

物語は、時の政府が日本国憲法第九条の改正を検討しているという背景から始まります。政府は国民全体の意思を確認するために、世代別に諮問委員会を招集します。しかし、他の世代別委員会では、第九条の維持を主張する声と改正・破棄を求める声が真っ二つに分かれ、結論を出すことができませんでした。そこで、日本の将来を担う世代として、20代の若者たちの論議に最終的な判断が託されることになります。集められた12人の若者たちは、それぞれの立場や経験に基づき、平和主義、安全保障、自衛隊の存在、国際貢献など、憲法第九条に関連する多岐にわたる論点をぶつけ合います。議論は感情的になり、時には衝突しながらも、彼らは憲法九条の本質に迫ろうと努めます。

監督・スタッフ

監督と脚本を手掛けたのは、本作が長編映画監督としての2作目となる宮本正樹氏です。前作『共に歩く』でデビューを飾った宮本監督は、社会的なテーマを扱いながらも、人間ドラマを通して観客に問いを投げかけるスタイルで知られています。本作でも、限られた空間と会話劇の中で、憲法九条を巡る議論の複雑さや、若者たちの内面的な葛藤を見事に描き出しています。

制作スタッフには、エグゼクティブプロデューサーとして河野正人、プロデューサーとして佐伯寛之、宇都木基至が参加しています。撮影は千葉史朗、録音はKeefarが担当し、緊迫した議論の場の雰囲気を作り出しています。また、編集は佐藤崇、音楽は小野川浩幸が手掛け、作品世界を構築しています。

キャスト

本作には、様々なメディアで活躍する若手・中堅俳優が集結しました。憲法九条を巡る議論を繰り広げる12人の20代を演じたのは以下の俳優陣です。

南圭介
馬場良馬
タモト清嵐
松本寛也
荒牧慶彦
聡太郎
小笠原健
中村僚志
はねゆり
綱島恵里香
森レイ子
睡蓮みどり

彼らが演じる多様なキャラクターは、それぞれが異なる視点や価値観を代表しており、観客は彼らの言葉を通して、憲法九条問題の多面性を知ることになります。

公開情報

映画『第九条』は、2016年7月2日より、神奈川県横浜市のブリリアショートショートシアターと、群馬県伊勢崎市のプレビ劇場ISESAKIにて公開されました。

作品の意義

本作は、特定の結論や主張を押し付けるのではなく、あくまで憲法第九条を巡る様々な意見が存在することを提示し、「議論すること」そのものの重要性を浮き彫りにしています。未来を担う若い世代が、国の根本に関わる問題に真剣に向き合う姿を描くことで、観客一人ひとりにも憲法九条について改めて考え、自分自身の意見を持つことの意義を問いかける作品となっています。日本社会の現在と未来を見つめる上で、示唆に富む一本と言えるでしょう。

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