第二十号掃海艇

第二十号掃海艇 艇歴

第二十号掃海艇（だいにじゅうごうそうかいてい）は、大日本帝国海軍が運用した掃海艇であり、第十九号型掃海艇の二番艇として建造されました。

誕生から緒戦へ

七〇〇トン型掃海艇の建造計画に基づき、仮称艦名第一六五号艦として計画された本艇は、一九四一年（昭和十六年）三月十九日、株式会社東京石川島造船所にて起工されました。同年八月五日、「第二十号掃海艇」と命名され、当初は舞鶴鎮守府に仮定登録され、第七号型掃海艇の八番艇と位置付けられました。九月十七日に進水し、艤装工事を経て十二月十五日に竣工。竣工と同時に本籍を舞鶴鎮守府と定められ、第三艦隊第二根拠地隊に編入されました。同日、物資を搭載し高雄へ向け回航。十二月二十四日高雄に入港しましたが、二十六日には港内で駆逐艦「村雨」と接触事故を起こし損傷。修理のため馬公へ回航され、年末から翌一九四二年（昭和十七年）一月八日にかけて入渠整備を受けました。

一月十一日、ダバオ攻略部隊を護衛するため馬公を出港し、船団に合流後、作戦に参加。二月二十四日以降は、ジャワ攻略作戦にも加わりました。

ラバウル方面での活動

一九四二年三月十日、第四艦隊第八特別根拠地隊に編入され、軍隊区分ではR方面防備部隊海上部隊に配属。第三十駆逐隊司令の指揮下、船団護衛や航路啓開などの任務にあたったほか、ブーゲンビル島の攻略時には根拠地海上部隊の一員として第十四掃海隊司令の指揮下で行動しました。以降、ラバウル方面を中心に護衛や輸送任務に従事。

四月一日、艦艇類別等級が改正され、掃海艇の部には新たに第十九号型が設けられ、その二番艇と定められました。十日には第八特別根拠地隊が第八根拠地隊へと改編され、本艇は同根拠地隊の附属となりました。五月二十二日、三隻編成の門司行き船団を護衛しラバウルを出港。赤道付近で船団から分離しましたが、翌二十五日、同船団は米潜水艦「トートグ」の攻撃を受け、海軍徴傭船「彰化丸」が一隻撃沈されています。六月十七日にはガダルカナル島へ設営隊を輸送するためラバウルを出港、二十四日に帰着後は引き続きラバウル方面での護衛にあたりました。

七月十四日、第八根拠地隊は第八艦隊の隷下に入りました。八月十六日、南海支隊を輸送する船団を護衛しラバウルを出港。二十日までバザブア攻略作戦に参加し、その後八月中はブナ方面で作戦行動を展開しました。

高雄・舞鶴・鎮海への転属

一九四三年（昭和十八年）三月二十日、台湾方面への配置転換が内示され、船団護衛を兼ねて台湾へ向かいます。四月十日、第二一号掃海艇と共に高雄警備府馬公方面特別根拠地隊に編入され、馬公方面防備部隊の指揮下に入りました。また同日付で、役務を舞鶴鎮守府に登録される警備掃海艇と定められました。本艇の転入に伴い、馬公方面特別根拠地隊所属の敷設艇「澎湖」および特務艇「測天」は、入れ替わるように第八根拠地隊第八十一警備隊へ転出しています。五月には馬公工作部において多岐にわたる整備作業が施されました。六月三日、馬公方面防備部隊への編入を解かれ、基隆方面防備部隊の指揮下に入りました。八日以降、本艇が舞鶴鎮守府へ転出するまで、基隆方面防備部隊の指揮官は第二十号掃海艇長が兼務する形となりました。

七月十日、基隆から馬公へ向かう輸送船「津山丸」を正午まで護衛した後、海軍徴用船「大和丸」他三隻を高雄まで護衛しました。七月十四日には、バラストタンクおよび予備倉庫の一部を重油タンク兼バラストタンクへ改造する訓令が発令されています。十五日、第二一号掃海艇と共に舞鶴鎮守府に編入され、第一兵力部署の海面防備部隊と、第二兵力部署の護衛部隊第一護衛隊にそれぞれ編入されました。二十二日、舞鶴への回航を兼ね、一〇隻からなる二八三船団を門司まで護衛する任務を与えられ高雄を出港。舞鶴到着後は、訓令に基づいた改造工事に加え、若狭湾周辺での対潜掃蕩や哨戒任務に従事しました。

九月十七日、鎮海警備府に編入され、その海上護衛部隊に配されました。以降は、鎮海や竹敷周辺海域において、哨戒、対潜掃蕩、機雷処分、および護衛任務に従事しました。

横須賀指揮下と南西諸島方面

一九四四年（昭和十九年）三月五日、横須賀鎮守府の作戦指揮下に編入され、七日横須賀に到着。九日、木更津にて東松二号船団（一〇隻）に合流しました。十二日、木更津を出港し、十九日サイパンに到着。二十日には陸軍輸送船「玉鉾丸」を護衛してグアムへ向かい、同日中に到着しました。二十二日、特設掃海艇「第五利丸」と共に「玉鉾丸」を護衛してサイパンへ戻り、翌二十三日到着。二十八日、特設運送船「慶洋丸」（旧東松一号甲船団）および「いくしま丸」を特設掃海艇「第八拓南丸」と共に護衛しサイパンを出港、横須賀へ向かいました。しかし三〇日、「いくしま丸」が米潜水艦「スティングレイ」の攻撃を受け沈没。本艇は爆雷による対潜攻撃を行った後、溺者救助にあたりました。四月四日、横須賀に到着しました。

四月十五日、二六隻の大船団である東松六号船団を護衛し木更津を出港。同日付で新艇長として田中三蔵大尉が発令されましたが、船団出港には間に合わず、田中大尉は本艇が横須賀に帰還後に着任しています。四月二十三日サイパンに到着。同日、陸軍輸送船「稲荷丸」、海軍配当船「利根川丸」を駆逐艦「卯月」、特務艦「猿島」と共に護衛し、同日中にグアムへ到着したほか、翌二十五日には復路の船団を護衛してグアムを出港し、同日サイパンに到着。二十七日には東松六号復航船団（一四隻）を護衛しサイパンを出港、五月四日横須賀に到着しました。

五月十七日、一二隻からなる三五一五船団を護衛し館山を出港。二十五日サイパンに到着。二十八日には百十九名の便乗者を乗せ、二隻からなる「濱江丸」船団を護衛してサイパンを出港。同日グアムに到着し便乗者を降ろしました。翌二十九日、二隻編成の「ばたびや丸」船団を護衛しグアムを出港、同日サイパンに到着。三十一日、八隻編成の四五三〇船団を護衛しサイパンを出港。しかし航海中の六月二日には「千代丸」、四日には「白山丸」が相次いで被雷沈没し、本艇は爆雷による対潜攻撃を行いました。六月八日横須賀に到着し、十九日まで横須賀海軍工廠第二船渠にて、訓令に基づく改造工事や艇底の塗り替え作業などが行われました。

六月二十四日、二隻編成の三六二四船団を第一七一号駆潜特務艇と共に護衛し八丈島へ向かい、二十五日神湊に到着。神湊泊地の警戒任務にあたりました。二十八日には特設運送船「第十雲海丸」を護衛し神湊を出港、翌二十九日横須賀に到着しました。

七月一日、横須賀鎮守府の作戦指揮を解かれ、鎮海警備府海上護衛部隊に復帰。二日には海軍徴傭船「芝園丸」を第一五九号駆潜特務艇と共に護衛し八丈島へ向かい、三日八丈島に到着。翌四日、「芝園丸」を三七〇一船団に引き渡した後八丈島を出港し、六日鎮海に帰着しました。以降は、朝鮮半島南部海域での対潜掃蕩や浮流機雷の処分等に従事しました。七月二十八日、門司へ回航され、支那方面艦隊の作戦指揮下に編入されました。

第一海上護衛隊指揮下と南シナ海

一九四四年八月一日、七隻からなるモ〇五船団を護衛し門司を出港。五日、支那方面艦隊の作戦指揮を解かれ、第一海上護衛隊の作戦指揮下に編入されました。十一日までに門司へ回航するよう命じられ、七日那覇に到着。那覇での作業中、陸軍輸送船「山萩丸」が本艇の右舷錨鎖に絡み、錨鎖が切断するという事故が発生。切断した錨鎖の回収のため、九日まで那覇に留まりました。十一日、門司に到着。十五日、一五隻からなるモタ二三船団を護衛し門司を出港。二四日、台湾沖で米潜水艦「ロンクィル」の攻撃により、船団は二隻が被雷（うち一隻沈没）する被害を受けたため、予定していた高雄行きを変更し、二五日一旦基隆に入港しました。二十七日基隆を出港し、二十九日高雄に到着。三十一日、ミ船団のミ一五船団救援のため、駆逐艦「鵯」、第四一号駆潜艇、第六三号駆潜艇と共に高雄を出港。九月一日、遭難現場に到着し、「鵯」、第四一号駆潜艇と共に広範な対潜掃蕩を実施。二日、馬公に回航しました。

九月四日、馬公出港時一三隻からなるミ一七船団を護衛し馬公を出港。七日、アパリで第四一号駆潜艇と共に船団から分離し、高雄を出港した一一隻からなるタマ二五船団（元のモタ二三船団）の増援に向かい、八日に合流を果たしました。九日、海軍徴傭船「豊岡丸」、陸軍船「満州丸」が相次いで被雷沈没。本艇は第一七号掃海艇、第四一号駆潜艇と共に、一〇日まで現地で対潜掃蕩を行いました。十一日、船団がラポッグ湾に到達したところで船団から分離し、十二日高雄に到着。十四日には陸兵二五〇名を乗せバタン島へ向かい、翌十五日揚陸、十六日高雄に帰着しました。十八日、八隻からなるタマ二六船団を護衛して高雄を出港。二一日、船団は米潜水艦「ピクーダ」および「レッドフィッシュ」の攻撃により、「瑞穂丸」など二隻が被雷沈没する被害を受けたため、本艇は直ちに溺者救助と爆雷戦を行いました。二十二日、船団はラボック湾に退避。本艇もこれに同行し、入港後、収容した遭難者を退艇させました。二十六日、サンフェルナンドに入港し、海軍配当船「日南丸」から重油を、陸軍船「白根山丸」から石炭の補給を受けました。二十八日、ミマ一一船団救援のためサンフェルナンドを出港。二十九日、一旦サンフェルナンドに寄港しサンタクルスに回航。十月一日サンタクルスを出港、二日マニラに到着しました。

十月四日、八隻からなるマタ二八船団を護衛し高雄へ向けマニラを出港。しかし航海中の六日には二隻、八日には一隻が撃沈される被害が出たため、船団は目的地を香港に変更し、十一日到着した。当時、フィリピンや台湾方面は大規模な空襲を受けており（台湾沖航空戦）、船団の高雄回航は二十七日まで中断を余儀なくされました。再編成された船団はホマ〇一船団と改称し、二十七日香港を出港。三十日高雄に到着しました。

十一月一日、米潜水艦群の襲撃を避け基隆に退避していたモマ〇六船団（基隆出港時一二隻）に合流するため基隆へ回航し、同日基隆を出港。二日、海軍徴傭船「あとらす丸」が被雷し航行不能となったため、本艇は直ちに救難活動にあたり、六七四名の乗員を収容して一旦泊地に帰投。収容者を「阿蘇川丸」に移乗させた後、再び遭難現場に戻りました。遭難現場到着後は、駆逐艦「呉竹」による「あとらす丸」の曳航を護衛し、サブタン島まで同行しました。六日、サブタン島を出港し、サンタクルスを経由して十日マニラに到着。フィリピンからの船舶退避命令を受けていたため、十一日二隻編成のマユ一〇船団を護衛し楡林へ向けマニラを出港。しかし一四日には空襲で海軍徴傭船「美崎丸」が、一五日には潜水艦の攻撃により同「杉山丸」が相次いで撃沈され、船団は全滅した。本艇はサイゴンへ回航した。二十日、単独行動のサタ〇二船団（「日田丸」）に合流するためサイゴンを出港し、二一日カムラン湾に到着。翌二二日同湾を出港した。二十五日、「日南丸」船団（単独護衛対象は海軍配当船「日南丸」）護衛の命令を受け、サタ〇二船団から分離した。二十八日、日南丸船団から分離しサイゴンへ回航されました。

十二月にはマサ一二Ａ船団を護衛するためサイゴンを出港。サイゴン帰着後は、サイゴン-シンガポール間の船団護衛任務に従事しました。十二月末にはシサ三二船団を護衛しシンガポールを出港、一九四五年一月四日サンジャックに到着しました。

南号作戦への参加と最期

一九四五年（昭和二十年）一月六日、一〇隻からなるサシ三九船団を護衛しサンジャックを出港。九日シンガポールに到着しました。一月十六日から三十日までシンガポールの第百一海軍工作部において入渠、大規模な整備および修理が行われました。三十一日、二隻編成のヒ八八Ｃ船団を護衛しシンガポールを出港。二月十六日金門島に、十七日から十八日にかけて南日島に仮泊。ここで船団は二つに分かれ、本艇は「延長丸」を護衛し上海へ向かい、二十一日到着しました。二十五日に上海を出港、三月二日門司に到着した。

三月三日、第一護衛艦隊の作戦指揮を解かれ、鎮海警備府護衛部隊に復帰した。舞鶴へ回航され、四日から二十八日まで舞鶴海軍工廠にて修理を行った。修理中の六日、第百三戦隊が鎮海警備府の作戦指揮下に編入され、護衛部隊の指揮を同戦隊司令官が執ることになったため、以降は第百三戦隊所属各艦との共同行動が増加した。三月三十日、鎮海に到着しました。

四月一日、荷衣島へ回航されたが、同日北緯三四度〇二分、東経一二四度〇〇分の地点でタモ五一船団が米潜水艦の攻撃と濃霧により離散したため、本艇は第二一五号海防艦、第二六号駆潜艇と共に、行方不明船の捜索および対潜掃蕩のため現場海域へ向かった。六日、掃蕩任務を中断し、タモ五三船団の護衛に向かった。十一日、特設掃海艇「第十七日之出丸」が登山串沖で被雷沈没したため、海防艦「隠岐」と共に現場へ急行し、対潜掃蕩と航路安全の維持にあたった。十四日、青島に待機中の船舶（一五隻）を帰還させるため、海防艦「隠岐」と共に青島へ回航。十九日、「隠岐」らと共にモ七〇五船団第一分団を護衛して青島を出港、大東湾まで護衛した。二十日、八隻編成のモ七〇五船団第二分団を護衛するため大東湾を出港。二一日同分団と合同したが、二十五日荷衣島にて補給のため船団から分離。補給後、木浦へ回航された。

五月五日、朝鮮半島南西沖の黒山島西方海域において、米潜水艦「トレパン」（USS Trepang SS-412）の魚雷攻撃を受け沈没しました。沈没後の五月二十五日、第二十号掃海艇は帝国掃海艇籍から削除され、第十九号型掃海艇からもその名が消されました。

本艇は、その短い生涯において、日本の勢力圏が拡大・縮小する戦況の中、極めて広範な海域で多様な任務に従事し、特に船団護衛においては数多くの危険な局面を乗り越え、日本の海上交通維持に尽力しました。

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