第二次バルカン戦争

第二次バルカン戦争：同盟崩壊と領土紛争

第二次バルカン戦争は、1913年6月、第一次バルカン戦争での戦果に不満を抱いたブルガリア王国が、かつての同盟国であったセルビア王国とギリシャ王国に侵攻したことから始まりました。この戦争は、バルカン半島における勢力図を大きく塗り替え、第一次世界大戦への序章ともなった複雑な出来事です。

背景：マケドニアをめぐる争い

第一次バルカン戦争でオスマン帝国はバルカン半島からほぼ撤退し、バルカン同盟（ブルガリア、セルビア、ギリシャ、モンテネグロ）が勝利を収めました。しかし、戦後の領土分割、特にマケドニアの帰属をめぐって、同盟国間に深刻な対立が生じます。

戦前にセルビアとブルガリアは秘密協定を結び、マケドニアの分割について合意していましたが、第一次バルカン戦争後、セルビアとギリシャは協定された線よりも南まで領土を拡大しました。ブルガリアは、協定に従って北マケドニアの領土を譲渡するようセルビアに要求しますが、セルビアはこれを拒否。すでに列強からアルバニア北部の領土放棄を迫られていたセルビアは、これ以上の譲歩は受け入れられない立場でした。このことで、セルビア・ブルガリア同盟は完全に崩壊し、戦争は不可避となります。

さらにブルガリアは、ルーマニアとの国境紛争を抱えていました。シリストラ要塞の帰属をめぐり対立が続いたのです。ロシアの仲介によって一時的に問題は収束しましたが、ロシアへの不信感はブルガリアに増大します。

戦争準備：ブルガリアの過大な野望

ブルガリアの野望は、マケドニア全土、さらにはトラキア、エディルネ、コンスタンティノープルまで及ぶものでした。現実的な思考に欠けたこの野心は、第一次バルカン戦争での失敗にも見られます。コンスタンティノープル占領を試みたブルガリアは、ロシアからの警告を受け、その計画は頓挫しました。

エディルネの占領に成功したものの、マケドニアの大部分をセルビアとギリシャに奪われたブルガリアは、元同盟国への攻撃を決断します。しかし、東にはオスマン帝国、北にはルーマニアという敵対勢力を抱えながら、南と西の両面作戦を行うというブルガリアの戦略は、非常に危険なものでした。特にオスマン帝国がドイツから軍事顧問団を招いていたことは、ブルガリアにとって大きな脅威となりました。

セルビアとギリシャはブルガリアの攻撃を予測し、事前に防衛同盟を締結していました。この同盟はブルガリアの計画を大きく妨げるものとなりました。

戦争の経過：ブルガリアの敗北

宣戦布告なしに始まった戦争は、ブルガリア軍にとって予想外の展開となります。ブルガリアの計画は、セルビア軍とギリシャ軍を同時に攻撃し、迅速に領土を拡大することでありましたが、実際にはセルビア軍とギリシャ軍の反撃に遭い、次々と敗北を喫します。

ブルガリア軍は、特にギリシャ軍に大きな損害を受け、マケドニア南部での優勢を維持することができませんでした。セルビア戦線でも苦戦を強いられます。当初優勢だったブルガリア軍でしたが、セルビア軍の反撃を受け、戦局は逆転しました。

ルーマニアとオスマン帝国の介入

ブルガリアの苦戦は、ルーマニアとオスマン帝国の介入を招きます。ルーマニアは、南ドブルジャの領有を主張してブルガリアに宣戦布告。ルーマニア軍はブルガリア領内に侵入し、首都ソフィアに迫ります。オスマン帝国も、かつて失った領土を取り戻すため、ブルガリアに侵攻しました。

終戦：ブカレスト条約とコンスタンティノープル条約

ルーマニア軍が首都ソフィアに迫ると、ブルガリアは停戦を申し入れました。ブカレスト条約で、ブルガリアはセルビア、ギリシャ、ルーマニアに多くの領土を割譲することになります。また、コンスタンティノープル条約でオスマン帝国にもエディルネを割譲しました。

その後：第一次世界大戦への道

第二次バルカン戦争の結果、セルビアは勢力を拡大しますが、併合した領土の住民に対する弾圧も行われました。ブルガリアは敗北による屈辱から、復讐を誓い、第一次世界大戦では中央同盟国として参戦しますが、再び敗北を喫します。この戦争は、バルカン半島の複雑な民族問題や国際関係を浮き彫りにし、第一次世界大戦へとつながる重要な出来事となりました。

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