第二次戦略兵器制限交渉

第二次戦略兵器制限交渉（SALT II）：冷戦下の核軍拡競争と挫折した軍縮協定

第二次戦略兵器制限交渉（SALT II）は、アメリカ合衆国とソビエト連邦（以下、ソ連）が冷戦期に締結を目指した核軍縮条約です。1970年代後半、米ソ両国の核兵器開発競争は激しさを増しており、その制御が国際社会の喫緊の課題となっていました。SALT IIは、1972年に締結されたSALT Iに続く、より包括的な核軍縮協定を目指した交渉でした。

SALT II の目的と内容

SALT II の主要な目的は、核戦争の危険性を軽減し、戦略的安定を促進することでした。そのために、両国が保有する戦略[[核兵器]]の数を制限することが中心議題となりました。SALT II では、SALT I で制限された弾道ミサイルに加え、核兵器を搭載可能な爆撃機や潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）といった核兵器の運搬手段の数も制限対象に含まれていました。さらに、複数弾頭ミサイル（MIRV）の配備制限も交渉されました。

具体的には、条約はICBM、SLBM、重爆撃機、そして空中発射弾道ミサイル（ASBM）といった戦略[[核兵器]]運搬手段の総数を、各締約国2,400基以下に制限することを規定していました。さらに、1981年1月1日からは、その数を2,250基に削減することが計画されていました。条約では、これらの兵器の定義や、近代化の条件なども詳細に規定されています。例えば、ICBMの射程距離、爆撃機の性能、SLBMの発射母艦の種類など、具体的な基準が設けられていました。

条約締結と批准拒否

1979年6月18日、アメリカとソ連はオーストリアのウィーンでSALT II条約に調印しました。しかし、この条約はアメリカ合衆国の上院で批准されませんでした。その主な理由は、ソ連のアフガニスタン侵攻でした。この侵攻は、アメリカにおいてソ連の国際社会における行動に対する深刻な懸念を引き起こし、SALT II の批准に反対する世論が強まりました。結果として、SALT II は発効することなく、1985年に期限切れとなりました。

SALT II の意義と歴史的背景

SALT II は、発効には至らなかったものの、米ソ間の核軍縮交渉の歴史において重要な位置を占めています。冷戦という緊張関係の中、核兵器の拡散を抑制しようという国際的な努力の象徴と言えるでしょう。しかし、その挫折は、冷戦時代の米ソ関係の複雑さと、軍備制限交渉における政治的要因の大きさを示すものともなっています。

SALT II の失敗は、軍備管理交渉が技術的な問題だけでなく、政治的、地政学的状況に大きく左右されることを改めて示しました。その後、米ソ間の核軍縮交渉は、1980年代にレーガン大統領の登場とともに新しい局面を迎え、異なるアプローチが試みられることになります。SALT II の経験は、後の核軍縮交渉において重要な教訓として引き継がれ、国際的な核軍縮体制構築への道筋を探る上で、重要な歴史的背景となっています。

参考文献

日本国外務省『第2次戦略兵器制限条約(SALTII条約)骨子』1979年6月18日。
Treaty (1979/06/18), Treaty Between The United States of America and The Union of Soviet Socialist Republics on the Limitation of Strategic Offensive Arms (SALT II)

もう一度検索