第五インターナショナル

第五インターナショナル：歴史と多様な主張

「第五インターナショナル」という名称は、既存のインターナショナル（第一～第四インターナショナル）に続く、国際的な労働者組織の構築を目指した構想として、歴史上繰り返し用いられてきました。しかし、その実態は、時代や提唱者によって大きく異なっており、統一的な組織やイデオロギーを指すものではありません。

多様な主張と歴史的経緯

1938年、スペイン内戦下の混乱期に、スペインのマルクス主義統一労働者党（POUM）の一部メンバーが「第五インターナショナル」の樹立を主張しました。これは、既存のインターナショナルへの不満や、新たな国際的な労働者運動への希求を反映したものでした。

その後、1941年にはアルゼンチンで、「ケブラチョ」こと（記事では人物名省略）がトロツキズムとの決別を宣言し、「第五インターナショナル」を唱えました。この主張は、アルゼンチンの特定の政治的文脈に根ざしたものだったと考えられます。

アメリカ合衆国では、スパルタシストとして活動していたリンドン・ラルーシュが、スパルタシスト運動からの離脱後、1965年に「第五インターナショナル」を提唱しました。しかし、彼はその後、極右へと転向し、陰謀論を展開するようになります。ラルーシュの「第五インターナショナル」は、彼の個人的な政治思想と強く結びついたものでした。

1994年にはイギリスの社会主義未来運動が、2003年にはイギリスの革命的共産主義インターナショナルのための同盟（LRCI、後に第五インターナショナルのための同盟と改称）がそれぞれ「第五インターナショナル」を呼びかけました。これらは、イギリス社会主義運動内部における異なる立場からの主張であったと考えられます。

2009年には、ベネズエラの大統領ウゴ・チャベスが、従来のヨーロッパ中心のインターナショナルではなく、ラテンアメリカから世界革命を目指す「第五インターナショナル」を提唱しました。これは、チャベスのボリバリアン革命という政治思想と密接に関係しており、南米における左翼運動の新たな地平を切り開く試みとして捉えることができます。

様々な解釈と関連性

これらの様々な「第五インターナショナル」の主張は、共通点もあれば相違点もあります。共通点は、既存のインターナショナルへの批判と、より強力な国際的な労働者運動への願望です。しかし、それぞれのグループのイデオロギー、戦略、目指す社会像は大きく異なっていました。

これらの主張を理解するためには、それぞれの時代背景、政治的文脈、そして提唱者たちの思想を個別に検討することが不可欠です。単に「第五インターナショナル」という名称だけで、これらの運動をまとめて理解することはできません。

さらに、ロシアの詩人ウラジーミル・マヤコフスキーが1922年に発表した詩『第五インターナショナル』も、この名称の由来やイメージを考える上で重要な要素となります。この詩は、500年後の世界を描いた壮大な作品ですが、未完に終わっています。

結局、「第五インターナショナル」は単一の組織や明確なイデオロギーを指す言葉ではなく、世界各地で、時代を超えて、様々なグループによって用いられてきた、ある種の「理想」や「目標」を表す呼称と言えます。それぞれのグループが抱いた社会ビジョンや、国際的な労働者連帯への強い願望を読み解くことが、この複雑な歴史を理解する鍵となります。

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