第五号型掃海艇

日本海軍 第五号型掃海艇

日本海軍が運用した第五号型掃海艇は、同型艦が2隻のみ建造された掃海艇の艦級です。海軍省によって定められた艦艇類別等級表においては、本型に属する第五号および第六号の2隻も、先行して建造された艇群とまとめて「第一号型掃海艇」として分類されていました。

建造の背景と経緯

本型の建造計画は、1920年（大正9年）度に帝国議会で承認された、いわゆる「八八艦隊計画」に基づく軍備拡充の一部として位置づけられています。この計画において、日本海軍は近代的な掃海能力を持つ第一型掃海艇の建造を当初6隻予定していました。しかし、1922年（大正11年）にワシントン海軍軍縮条約が締結され、主力艦の保有制限などが定められるなど、その後の日本海軍の建艦計画全体に大きな影響が及びました。

この条約締結に伴う情勢変化や計画見直しの中で、当初計画された第一型掃海艇のうち、最後の3隻の起工が遅延することとなりました。この遅延した計画の中から、最後に建造された2隻が、先行建造艦である第一号型の一部設計を見直して完成した改良型、すなわち本型（第五号型）です。この設計変更により、本型は先行の第一号型とは異なるいくつかの特徴を持つこととなりました。

主な特徴と設計変更点

先行建造された第一型と比較した場合、第五号型掃海艇における主な変更点と特徴は以下の通りです。

船体寸法の増大：船体長や幅が若干拡大され、これにより基準排水量が先行型より約20トン増加しました。
前部マストの変更：艦橋前方に立つ前部マストが、先行型のシンプルな単柱構造から、より強度があり観測所などを配置しやすい三脚構造に変更されました。
第一煙突の高さ：艦橋に近い一番前の煙突は、竣工時から高めに設計されており、排煙が艦橋に流れ込むのを防ぐ目的があったと考えられます。
兵装の変更点：
搭載する砲には、先行建造艦が竣工後に装備したのに対し、本型では竣工時から砲盾（防楯）が装備されていました。これは、乗員の保護強化を目的としたものです。
武装については、竣工直後には搭載されていたとされる8cm高角砲が、より近距離での対空戦闘に適した13mm単装機銃1挺へと交換されたと伝えられています。
* 掃海・爆雷装備：機雷掃海に使用する掃海具や、潜水艦攻撃に使用する爆雷投下台についても、先行型から一部変更が加えられました。

これらの変更は、本型が建造された時期における掃海艇に求められる性能や、運用上の経験に基づいた改良であったと考えられます。

同型艇と戦歴

第五号型掃海艇として建造されたのは以下の2隻です。

1. 第五号掃海艇：1925年（大正14年）2月25日に三井玉造船所（現・三井E&S造船 玉野事業所）にて竣工しました。太平洋戦争開戦後、第五号は掃海、船団護衛、哨戒任務などに広く従事しました。しかし、1944年（昭和19年）11月4日、マレー半島西側のマラッカ海峡において、イギリス海軍の潜水艦による雷撃を受け、航行不能となり沈没しました。これは大戦末期の、日本近海への敵潜水艦活動が活発化していた時期の喪失でした。

2. 第六号掃海艇：第五号と同日の1925年（大正14年）2月25日に、大阪桜島造船所（現・日立造船）にて竣工しました。第六号は太平洋戦争開戦劈頭に実行された南方作戦に投入され、特にボルネオ島北部、イギリス領クチンへの上陸作戦を支援する任務にあたりました。しかし、上陸作戦支援中の緒戦段階、1941年（昭和16年）12月26日、クチン泊地に停泊していた際にオランダ海軍機による空襲を受け、被弾し沈没してしまいました。これは開戦からわずか3週間余りでの喪失であり、本型としては最初の犠牲となりました。

両隻とも、太平洋戦争の開戦から間もなく実戦投入されましたが、第五号は戦争末期に、第六号は緒戦においてそれぞれ戦没し、その艇生を終えました。わずか2隻という少数ながら、戦時下の日本の海上交通確保や上陸作戦支援に貢献しました。

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