第十九号掃海艇

第十九号掃海艇（だいじゅうきゅうごうそうかいてい）

第十九号掃海艇は、太平洋戦争中に日本海軍が運用した掃海艇の一隻です。当初は「第十九号型」掃海艇の一番艇として計画されましたが、竣工からわずか半年余りで戦没し、その短い艇歴を終えました。姉妹艇と共に作戦行動を行う機会は一度もありませんでした。

建造と竣工

本艇は、昭和13年に策定された第四次海軍軍備充実計画（④計画）に基づき、700トン型の掃海艇として仮称艦名第164号艦として建造が始まりました。昭和15年9月17日、株式会社東京石川島造船所で起工され、同年12月10日には「第十九号掃海艇」と正式に命名、同時に第七号型掃海艇の7番艇として区分されました。

昭和16年2月18日に無事進水。その後艤装工事が進められ、同年4月22日には石川島造船所深川工場内に艤装員事務所が開設され、準備が進められました。そして、昭和16年5月31日に竣工。これにより艤装員事務所は撤去され、本艇は舞鶴鎮守府に本籍を置くとともに、第三艦隊第二根拠地隊に編入されました。

太平洋戦争開戦までの活動

竣工後、第十九号掃海艇は直ちに実任務に投入されました。昭和16年6月11日から8月25日にかけて、主に中国沿岸の中支・南支方面で監視警戒任務に従事しました。この期間中、6月22日から25日には披山島掃蕩作戦に参加し、上陸する陸戦隊の支援を実施。また、7月1日には王環島坎門鎮作戦にも参加しています。

特に重要な任務として、7月10日から8月6日までの間、第二遣支艦隊の作戦指揮下に編入され、南部仏印への進駐作戦（ふ号作戦）に参加しました。ここでは、陸軍輸送船団の護衛や、部隊が上陸する泊地の掃海という、作戦遂行上不可欠な任務にあたりました。作戦終了後、8月26日に内地に帰還し、以後は整備と訓練に時間を費やしました。

開戦、そして最後の瞬間

昭和16年11月26日、本艇は佐世保を出港し、12月1日に台湾の馬公に入港しました。そして、同年12月8日に太平洋戦争が開戦すると、本艇はフィリピン攻略を目指す軍隊区分「菲島部隊第一急襲隊」に配属され、第五水雷戦隊司令官の指揮下で行動を開始しました。

開戦直後の12月7日（日付は現地時間と思われます）、第一急襲隊の一員として、フィリピン北部アパリへの上陸船団を護衛するため馬公を出港。12月10日、フィリピン北部ルソン島のカガヤン川河口付近で掃海作業を行っていた最中、本艇はアメリカ船を発見しました。これに対し、上級司令部からその商船を拿捕するよう命令が下されました。

商船「セッテス」を拿捕するため、カガヤン川河口付近に投錨した直後、本艇は敵機による爆撃を受けたとされています。被弾した艇は、後部の弾薬庫や爆雷庫が誘爆を起こし、甚大な損傷を負いました。結果として、艇橋より前部の一部が水面上に露出した状態で河口に着底、戦闘不能となり放棄されることになりました。

この攻撃により、乗員12名が死亡し、さらに60名が行方不明となる痛ましい被害が発生しました。また、拿捕隊として「第十六号掃海艇」から本艇に移乗していた10名も行方不明となりました。

沈没原因とその後

本艇の沈没時の状況について、艇長の報告によれば、乗員は敵機を目撃していないものの、状況から高高度からの爆撃を受けたと推測されています。そして、被弾によって搭載していた爆雷が弾火薬庫を誘爆させ、爆沈に至ったものと推定されました。

しかし、この沈没に関する記録には不明瞭な点も存在します。防衛研修所戦史室が編纂した戦史叢書によれば、アメリカ側の資料には第十九号掃海艇の沈没に直接該当する記録は見当たらないとされています。一方、この日フィリピン北部を攻撃したアメリカ陸軍航空軍第14爆撃飛行隊のB-17爆撃機のうち、コリン・ケリー・ジュニア中尉が搭乗していた1機による爆撃が本艇を沈めた可能性が高いとする説も存在します。

沈没後、本艇は書類上は昭和17年1月15日付で舞鶴鎮守府の第四予備掃海艇に指定されました。同年4月1日には、艦艇類別等級別表において「第十九号型」の項が新設され、本艇はその一番艇として正式に位置づけられました。しかし、これは既に失われた艇に対する分類変更に過ぎません。

結局、本艇が再稼働することはなく、終戦後の昭和20年11月30日、海軍省の廃止に伴い正式に除籍されました。第十九号掃海艇は、その短い艇歴の中で多くの作戦に参加しながらも、太平洋戦争の緒戦でその姿を消した一隻として記録されています。

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