遣支艦隊

遣支艦隊とは

遣支艦隊（けんしかんたい）は、旧日本海軍の部隊であり、中国大陸沿岸部や揚子江流域の警備、作戦活動を主な任務としていました。略称はCF。

初期の遣支艦隊

1918年（大正7年）8月10日、日本海軍は上海から南京にかけての警備を担当していた第七戦隊を改編し、初めて「遣支艦隊」という名称を使用しました。この初代遣支艦隊は、防護巡洋艦「千代田」や砲艦などを中心に構成され、揚子江流域および中国大陸沿岸の警備を行いました。しかし、翌1919年（大正8年）8月9日には「第一遣外艦隊」へと改編され、その歴史に幕を閉じます。

支那方面艦隊と3つの遣支艦隊

その後、1937年（昭和12年）10月20日に支那方面艦隊（CSF）が新編され、第三艦隊と第四艦隊が編入されました。さらに翌年には第五艦隊も加わり、支那方面艦隊の戦力が強化されました。しかし、戦力が集中しすぎたため、1939年（昭和14年）11月15日に艦隊の再編が行われ、第三艦隊は第一遣支艦隊（1CF）、第五艦隊は第二遣支艦隊（2CF）、第四艦隊は第三遣支艦隊（3CF）と改称されました。

これらの3つの遣支艦隊は、大東亜戦争（日中戦争、太平洋戦争）の推移に合わせて規模を縮小しながらも、中国大陸や沿岸部で様々な作戦行動を継続しました。本稿では、この支那方面艦隊隷下の3つの遣支艦隊について詳しく解説します。

第一遣支艦隊

1932年（昭和7年）に編成された第三艦隊は、1937年（昭和12年）の支那事変勃発に伴い増強されました。同年10月20日に支那方面艦隊が新編されると、第三艦隊司令長官が支那方面艦隊司令長官を兼務することになりました。1939年（昭和14年）11月15日、第三艦隊は第一遣支艦隊と改称されました。

第一遣支艦隊は、上海を拠点に揚子江流域で作戦を展開しました。主な戦力は、武漢に駐留する陸戦隊の漢口方面特別根拠地隊と、揚子江の航路確保のために集約された第11戦隊（砲艦部隊）でした。また、九江や南京にも陸上部隊が駐留していました。

1943年（昭和18年）8月20日に第一遣支艦隊は解隊され、揚子江方面特別根拠地隊が新編されました。任務の内容は以前と変わりなく、陸上部隊は各地の拠点を守り、砲艦は揚子江の航路確保に努めました。終戦まで、揚子江方面特別根拠地隊は戦闘を継続しました。

編制

1939年11月15日、改称時
第11戦隊：安宅、勢多、堅田など多数の砲艦
漢口方面特別根拠地隊
九江基地隊
1941年12月10日、太平洋戦争開戦時
宇治、安宅、勢多などの砲艦
附属：漢口方面特別根拠地隊、九江基地隊
1942年7月14日、ミッドウェー海戦後
宇治、安宅、勢多などの砲艦
附属：漢口警備隊、九江警備隊

歴代司令長官

谷本馬太郎中将
細萱戊子郎中将
小松輝久中将
牧田覚三郎中将
遠藤喜一中将

歴代参謀長

堀内茂礼少将
一瀬信一少将
小暮軍治少将

第二遣支艦隊

1938年（昭和13年）2月1日に新編された第五艦隊は、同日附で支那方面艦隊に編入されました。1939年（昭和14年）11月15日の改編により、従来の第五艦隊は第二遣支艦隊と改称されました。

第二遣支艦隊は広州を拠点に、華南方面で活動しました。南シナ海に面する海域を担当したため、水上戦力として第十五戦隊が配備され、水雷戦隊に匹敵する戦力を持っていました。しかし、太平洋戦争に備えて重巡洋艦は軽巡洋艦に、駆逐隊は砲艦や水雷艇に差し替えられました。陸上戦力は、海南島根拠地隊、広東方面特別根拠地隊、厦門方面特別根拠地隊の3つの特別根拠地隊を擁していました。

1941年（昭和16年）には、仏印進駐作戦（ふ号作戦）に主力部隊として参加しました。また、太平洋戦争開戦後は香港攻略作戦にも参加しました。終戦まで、海上護衛作戦や船団護衛任務に協力し、陸上部隊は香港や厦門を中心に各地で奮戦しました。

編制

1939年11月15日、改称時
第15戦隊：重巡洋艦「鳥海」など
第5駆逐隊、第21駆逐隊
附属：広東方面特別根拠地隊など
ふ号作戦時
第15戦隊：重巡洋艦「足柄」など
第五水雷戦隊
その他多数の艦艇
1941年12月10日、太平洋戦争開戦時
第15戦隊：軽巡洋艦「五十鈴」など
附属：広東方面特別根拠地隊など
1942年7月14日、ミッドウェー海戦後
軽巡洋艦「嵯峨」、「橋立」など
附属：香港方面特別根拠地隊など
1944年4月1日
軽巡洋艦「嵯峨」、「橋立」など
香港方面特別根拠地隊など
1944年8月15日
軽巡洋艦「嵯峨」、「舞子」など
香港方面特別根拠地隊など
1945年6月1日
軽巡洋艦「舞子」、「初雁」など
香港方面特別根拠地隊など

歴代司令長官

高須四郎中将
沢本頼雄中将
新見政一中将
原清中将
副島大助中将
藤田類太郎中将

歴代参謀長

原忠一少将
安場保雄少将
小畑長左衛門少将
大熊譲少将

第三遣支艦隊

1937年（昭和12年）10月20日に新編された第四艦隊は、支那方面艦隊の麾下に置かれました。1939年（昭和14年）11月15日の改定によって、第四艦隊は独立艦隊となり、従来の第四艦隊は第三遣支艦隊に改編・改称されました。

第三遣支艦隊は青島を拠点に、華北方面で活動しました。改称時には、水上艦艇による作戦は一段落していたため、水上戦力は水上機母艦「瑞穂」と水雷艇部隊で編成された第十二戦隊のみに絞られていました。翌1940年（昭和15年）には「瑞穂」も連合艦隊附属となり、旗艦は海防艦「磐手」となりました。陸上戦力は、青島方面特別根拠地隊が山東半島の哨戒任務を担当しました。

1942年（昭和17年）4月10日に第三遣支艦隊は解散し、保有していた陸上戦力を集約して二代目の青島方面特別根拠地隊となりました。青島特根も終戦まで山東方面各地で奮戦しました。

編制

1939年11月15日、改称時
第12戦隊：水上機母艦「瑞穂」など
第21水雷隊：千鳥など
附属：青島方面特別根拠地隊
1941年12月10日、太平洋戦争開戦時
海防艦「磐手」
第11水雷隊：雉、雁
附属：青島方面特別根拠地隊

歴代司令長官

野村直邦中将
清水光美中将
杉山六蔵中将
河瀬四郎中将

歴代参謀長

多田武雄少将
金子繁治少将
大杉守一少将

まとめ

遣支艦隊は、時代とともに編成や任務が変化しましたが、一貫して中国大陸沿岸部や揚子江流域の警備、作戦活動を担いました。3つの遣支艦隊はそれぞれ異なる地域を担当し、それぞれの戦況に合わせて活動を続けました。これらの艦隊の存在は、日本海軍の作戦遂行において重要な役割を果たしました。

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