第百十九国立銀行

第百十九国立銀行：三菱UFJ銀行の源流

第百十九国立銀行は、明治時代に設立された銀行であり、現在の三菱UFJ銀行へと繋がる重要な前身の一つです。1879年（明治12年）に、臼杵藩（現在の大分県臼杵市）の出資によって東京で開業しました。

設立の背景

当時の銀行設立事情として、大分県内ではすでに複数の国立銀行が存在していました。具体的には、第二十三国立銀行（現在の大分銀行の前身）、第七十八国立銀行（現在の中津市）、第百九国立銀行（現在の佐伯市）の3行が設立されていたため、臼杵での新規開業は難しい状況でした。そこで、臼杵藩は東京に本店を置き、臼杵に支店を設けるという形で銀行設立を目指しました。

開業時の資本金は30万円。初代頭取には、臼杵藩の家老職を務めた村瀬十駕が就任し、支配人には後に三菱の金庫番として知られる三村君平が抜擢されました。

経営危機と救済

臼杵藩主の稲葉久通は、島原藩主の松平家とも親密な関係にあり、松平家が中心となって函館に設立した第百四十九国立銀行にも出資していました。さらに両家は、北海道の物産を扱う楽産商会を設立し、一時は隆盛を誇りました。

しかし、1884年（明治17年）頃になると、楽産商会は米相場での失敗などから経営が傾き始めます。楽産商会は郵船汽船三菱会社（後の三菱商船）から増資資金を借り入れていましたが、この借り入れに対して第百四十九国立銀行とともに第百十九国立銀行も保証人となっていました。そのため、楽産商会の経営悪化は両行の経営危機に直結しました。

事態を重く見た三村君平は、金融部門を持たない三菱の大番頭であり、臼杵藩士族でもあった荘田平五郎に窮状を訴え、救済を依頼しました。その結果、第百十九国立銀行は第百四十九国立銀行と合併し、その後、三菱に順次営業譲渡されることとなりました。この営業譲渡を経て、三菱合資会社銀行部となり、最終的には三菱財閥の中核金融会社である三菱銀行（現在の三菱UFJ銀行）へと発展していきました。

沿革

1879年（明治12年）1月11日：東京京橋区で開業
1879年（明治12年）1月18日：臼杵に支店開設
1885年（明治18年）5月7日：第百四十九国立銀行を合併
1885年（明治18年）5月28日：郵船汽船三菱会社が経営継承
1895年（明治28年）7月20日：三菱合資会社銀行部が設立され順次営業譲渡
1898年（明治31年）12月3日：営業満期により解散

関連事項

国立銀行
三菱銀行
東京三菱銀行
三菱UFJ銀行

第百十九国立銀行は、短命ではありましたが、その後の三菱銀行、そして三菱UFJ銀行へと繋がる重要な一歩となりました。地方銀行の設立事情、経営危機、そして大手財閥による救済と統合という、明治時代の金融史を象徴する出来事として、その名は記憶されるべきでしょう。

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