第1次坂下門乱入事件

第1次坂下門乱入事件：昭和天皇訪欧阻止を企てた過激派の暴挙

1971年9月25日、東京・千代田区で発生した第1次坂下門乱入事件は、日本の新左翼によるテロ活動の象徴的な出来事として歴史に刻まれています。この事件は、同年9月27日から予定されていた昭和天皇のヨーロッパ歴訪を阻止しようと企てられたものでした。

事件の発端：天皇訪欧阻止運動の高まり

昭和天皇のヨーロッパ歴訪を巡っては、新左翼グループが「天皇制イデオロギーの利用による反動攻勢」との見解を示し、訪問阻止を掲げて激しい抗議活動に打って出ました。彼らは天皇を象徴とする体制そのものに反旗を翻し、皇室に対するテロ攻撃を繰り返す「反皇室闘争」を激化させていたのです。

このため、皇宮警察本部は訪欧直前まで厳戒態勢を敷き、組織を挙げての警備体制を敷きました。しかし、この厳戒態勢をもってしても、過激派の攻撃を完全に阻止することはできませんでした。

事件の概要：皇居への無謀な突入

事件当日、午前11時55分頃、白の乗用車が皇居坂下門前に急停車。車の中から発煙筒が投げ込まれ、乗用車はそのまま坂下門に突進しました。警視庁の警戒線を突破した犯人グループは、発煙筒やヌンチャクを振り回し、皇宮護衛官に襲いかかりました。

彼らは皇居内に侵入し、宮内庁庁舎を目指して約200メートルも走り抜けました。犯行グループの異常な行動に、皇宮警察の警護官らも驚きを隠せない様子でした。しかし、皇宮警察坂下護衛署の皇宮護衛官24名と駆けつけた警視庁警察官2名の連携プレーにより、宮内庁中央玄関前で犯人4名が取り押さえられました。

犯人たちは取り調べに対し、当初は黙秘を貫きました。しかし、彼らが被っていた「中核」「沖青委」「天皇訪欧糾弾」と書かれた白いヘルメットから、中核派系の過激派グループであることが判明しました。

犯人グループと裁判：沖縄青年委員会と未成年者の関与

逮捕された犯人4名は、沖縄出身者で中核派系組織「沖縄青年委員会」の構成員である成人3名と少年1名でした。未成年者の関与という点も、この事件をより複雑で衝撃的なものにしました。

犯人の裁判は、少年と成人3名でそれぞれ別々に進められました。1972年3月、東京地方裁判所は少年に懲役2年6月（執行猶予3年）を、1975年3月には成人3名に懲役3年（執行猶予4年）を言い渡しました。比較的軽い判決に、事件の重大性に鑑みると物足りなさを感じた国民も多かったと言われています。

事件の余波とその後：日本の社会と皇室への影響

第1次坂下門乱入事件は、日本の社会に大きな衝撃を与えました。新左翼の過激なテロ活動が、皇室という象徴的な存在をも標的にしたこと、そして未成年者が関与していたという事実は、国民に深い不安と怒りを抱かせました。この事件は、日本の社会構造や治安、そして皇室のあり方について、国民に改めて問いかける契機となりました。また、この事件をきっかけに、皇室警備の強化が図られ、警備体制の抜本的な見直しが行われました。

この事件は、単なるテロ事件として片付けるのではなく、高度経済成長期における社会不安や、新左翼運動の過激化といった時代の背景と深く関連付けて考察する必要があるでしょう。日本社会の転換期において、その暗部を照らす歴史的な出来事だったと言えます。

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