第10回全国中等学校優勝野球大会

第10回全国中等学校優勝野球大会

1924年（大正13年）8月13日から19日まで、兵庫県の甲子園大運動場にて、第10回全国中等学校優勝野球大会が開催されました。この記念すべき第10回大会は、その会場となった甲子園大運動場（現在の阪神甲子園球場）が完成したばかりの真新しい球場で行われたことが、最大の特色として挙げられます。

新たな聖地、甲子園球場の誕生

この大会が甲子園で行われることになった背景には、前年に行われた第9回大会の準決勝で、あまりの観衆が球場に押し寄せ、試合が一時中断するという事態が発生したことがあります。この出来事を受けて、阪神電気鉄道の専務であった三崎省三氏らが中心となり、より多くの観客を収容できる大規模な球場建設が計画されました。そして、大会開幕を目前に控えた同年7月31日、西宮市に約5万人の収容能力を誇る甲子園大運動場が竣工。完成したばかりのこの球場が、記念すべき第10回大会の舞台となったのです。また、この大会からは、収容能力が増したことにより、指定席に限り入場料が初めて導入されることになりました。

予想を上回る大盛況

甲子園球場での初めての全国大会は、関係者の予想を大きく超える熱狂に包まれました。大会が始まってわずか3日目には、完成したばかりの巨大な球場が超満員となったのです。球場関係者は、5万人という収容人数が満員になるには10年はかかるだろうと見ていたと言われており、そのわずか3日での満員には、当時の人々、特に野球人気がいかに高まっていたかを物語っています。

大会の経過と広島商の初優勝

この大会には全国各地から精鋭が集い、熱戦が繰り広げられました。1回戦では北海中が静岡中を相手に延長12回の末にサヨナラ勝ちを収めるなど、序盤から緊迫した試合が見られました。また、準々決勝では広島商が第一神港商との打撃戦を延長10回で制し、準決勝でも大連商相手に延長12回の激闘をサヨナラで勝利するなど、広島商は苦しい試合を勝ち上がりました。

決勝戦に進出したのは、激戦を勝ち上がった広島商と、安定した戦いを見せた松本商でした。そして決勝戦を制し、栄えある第10回大会の優勝旗を手にしたのは広島商でした。広島商は、兵庫県以西の学校としては初めて、また実業学校としても初めての全国制覇という快挙を成し遂げました。

記録と記憶に残る選手たち

この大会では、多くの選手が活躍し、記憶に残るプレーを見せました。本塁打も多数生まれ、特に鳥取一中の横山保正選手が2本、市岡中の土肥梅之助選手も2本の本塁打を記録しています。また、後年プロ野球で活躍する選手や、指導者として名を馳せる選手もこの大会に出場していました。例えば、松山商の森茂雄選手、第一神港商の山下実選手、島秀之助選手、三谷八郎選手などが挙げられます。彼らの多くが、真新しい甲子園の土を踏み、その後の野球人生の礎を築いたのです。

第10回全国中等学校優勝野球大会は、甲子園球場という新たな野球の聖地の誕生を告げるとともに、予想をはるかに超える観客動員で野球人気の高まりを改めて示した大会として、日本の野球史に大きな一歩を刻みました。甲子園の歴史は、この大会から本格的に始まったと言えるでしょう。

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