第10回東京国際映画祭

第10回東京国際映画祭：新たな試みと国際的な輝き

1997年11月1日から10日間にわたって開催された第10回東京国際映画祭は、これまでの映画祭の歴史に新たな章を刻む重要なイベントとなりました。従来9月下旬から10月上旬にかけて開催されていた映画祭でしたが、この年から開催時期が1ヶ月遅くなり、11月上旬に開催されることとなりました。会場は渋谷のオーチャードホール、シアターコクーン、ル・シネマ、渋谷公会堂など複数の映画館やホールが使用され、国際的な映画祭の雰囲気を醸し出していました。

新たな部門と受賞作品

この回から、アジア作品を主軸とした「シネマプリズム」部門と「アジア映画賞」が新設されました。「シネマプリズム」部門は、アジア映画の多様性と魅力を世界に発信する役割を担い、その後も数年間継続されました。

インターナショナル・コンペティション部門では、東京グランプリが2作品同時受賞という前代未聞の出来事が起こりました。アデミル・ケノヴィッチ監督の『パーフェクトサークル』とカロリーヌ・リンク監督の『ビヨンド・サイレンス』が、その栄誉に輝きました。審査員特別賞にはマーク・ハーマン監督の『ブラス！』が選ばれ、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀女優賞、最優秀男優賞など、各賞にも多くの優れた作品や俳優たちが名を連ねました。さらに、88歳にしてインターナショナル・コンペティション部門に監督作を出品していたマノエル・ド・オリヴェイラ監督には、特別功労賞が贈られました。

ヤングシネマコンペティション部門では、パルヴィズ・シャバァズィ監督の『南から来た少年』が東京ゴールド賞を受賞するなど、若手監督たちの才能も大きく開花しました。また、アジア映画賞ではチャン・ソヌ監督の『バッド・ムービー』が受賞しました。

多様なプログラムと特別企画

映画祭では、インターナショナル・コンペティション、ヤングシネマコンペティションといった主要部門に加え、それまでのヤングシネマ受賞監督の最新作上映や、ロシアで発見された日本映画の上映、1997年に亡くなった映画人の回顧上映など、多様なプログラムが用意されていました。

さらに、「ジャックスカード東京国際ファンタスティック映画祭」、「カネボウ国際女性映画週間」、「萬屋錦之介の世界展」、「草乃しずか 夢刺繍展」など、映画祭を盛り上げる多彩な協賛企画も開催されました。

国際的な審査員陣

審査員には、ソウル・ゼインツを委員長に、インナ・チュリコヴァ、バーバラ・スコヴァ、アッバス・キアロスタミ、深作欣二といった、国際的に著名な映画監督や俳優が名を連ねました。ヤングシネマ・コンペティションの審査員も、ユーセフ・シャヒーンを委員長に、マムター・シャンカル、マックス・テシエ、アキ・カウリスマキ、栗原小巻など、各国の映画界を代表する顔ぶれが揃っていました。

第10回東京国際映画祭は、新たな部門の設立、2作品同時受賞という歴史的出来事、そして国際的な審査員陣と多様なプログラムにより、記憶に残る映画祭となりました。アジア映画への注目、若手監督の発掘、そして映画を通じた国際交流という、映画祭の重要な役割を改めて印象づけるものとなりました。

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