アッバス・キアロスタミ

アッバス・キアロスタミ（Abbas Kiarostami）は1940年 6月22日にテヘランで生まれ、2016年 7月4日にパリで逝去したイランの映画監督、脚本家、写真家です。彼はイランの映画界における巨匠として知られ、国際的に高く評価されています。

来歴

テヘラン大学で芸術を学んだ後、キアロスタミは1970年に短編映画『パンと裏通り』で監督デビューを果たします。その後、1973年には長編映画『Tadjrebeh』を発表し、次第に名声を高めていきました。特に、1987年から1994年にかけて制作された『友だちのうちはどこ?』、『そして人生はつづく』、『オリーブの林をぬけて』の三部作で評価を確立し、現代イラン映画の代表的な存在となりました。

1997年には『桜桃の味』でカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを受賞し、1999年の『風が吹くまま』ではヴェネツィア国際映画祭の審査員賞特別大賞を受賞しました。また、2008年にはモーツァルトの歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』を演出し、オペラ界にも進出しました。2010年には、カンヌ映画祭でフランス・イタリア合作の映画『トスカーナの贋作』を発表し、国際的な注目を集めました。

彼の人生は2016年にがんで訪れたパリで幕を閉じるまで、多様なジャンルの作品制作で彩られていました。

作風

キアロスタミの作品は、小津安二郎からの影響を色濃く受けています。彼自身も小津のファンであることを公言し、『5 five 〜小津安二郎に捧げる〜』という作品も手掛けています。彼の監督作品の多くは、イラン政府による検閲という逆境の中で制作されましたが、その中でも特に『友だちのうちはどこ?』は、子供の視点を描くことで許可を得て撮影された名作です。

1979年のイラン革命により多くのクリエイターが国を離れる中、キアロスタミはイランに留まり、素人の役者を起用して人間の心の内面を独自の視点で描く作風を確立しました。彼の映画は、視覚的に豊かでありながらも、深いメッセージを持ち、観客にさまざまな解釈を与えることが特徴です。

代表的な作品

長編映画

- Tadjrebeh（1973年）
- 友だちのうちはどこ?（1987年）
- 桜桃の味（1997年）
- 風が吹くまま（1999年）
- ライク・サムワン・イン・ラブ（2012年）

短編映画

- パンと裏通り（1970年）
- Zang-e Tafrih（1972年）
- Dandan Dard（1983年）

キアロスタミの作品は、多くの国際映画祭で数々の賞を受賞しており、彼の影響力は今でも映画界に色濃く残っています。彼の作品に対するアプローチや視点は、新しい映画の作り方や進化に大きな影響を与え、映画とは何かを再考させる力を持っています。彼の生涯の作品は、映画ファンにとって永遠に愛されることでしょう。

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