第138師団 (日本軍)

第138師団は、1945年（昭和20年）7月に、大日本帝国陸軍の師団の一つとして編成されました。この時期、関東軍は南方戦線への兵力転用により戦力が低下しており、満洲居留邦人や在郷軍人の動員、中国戦線からの部隊転用によって兵力をかき集めていました。

しかし、その実情は厳しいものでした。兵員の半数以上が訓練不足であり、日ソ中立条約の存在からソ連軍の侵攻を想定していなかった関東軍首脳部の混乱、そして深刻な物資不足に直面していました。特に砲弾は1200発程度しかなく、航空部隊のほとんどが実戦経験のない者で構成されていた他、小銃が行き渡らない兵士も10万人を超えるなど、戦力は大きく制限されていました。実質的な戦力は30万人程度に過ぎなかったと言われています。

第138師団は、この「根こそぎ動員」の中で、主に満洲で召集された邦人男子を主体に吉林省で編成されました。第30軍に編入され、吉林付近に主力が配置されましたが、編成は完了しておらず、1945年8月9日のソ連対日参戦時には総員2千名という小規模なものでした。ソ連軍の侵攻により撫順へ移動しましたが、本格的な戦闘を行うことなく終戦を迎え、8月19日に武装解除されました。

第138師団と同時に、第134、第135、第136、第137、第139、第148、第149師団が編成されました。これらの師団も、同様に戦力不足に苦しんだと考えられます。

師団概要

歴代師団長
山本務 中将：1945年（昭和20年）7月16日 - 終戦
参謀長
佐藤貞二 大佐：1945年（昭和20年）7月26日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：佐藤貞二大佐

最終所属部隊

歩兵第377連隊（満洲）：須貝良民大佐
歩兵第378連隊（満洲）：赤尾今朝雄少佐
歩兵第379連隊（満洲）：加藤恒平少佐
野砲兵第138連隊
工兵第138連隊
輜重兵第138連隊
第138師団挺進大隊
第138師団通信隊
第138師団兵器勤務隊
第138師団病馬廠

第138師団は、その編成時期と戦力不足から、実質的な戦闘を行うことなく終戦を迎えた師団の一つです。その存在は、当時の日本軍の末期的な状況を象徴していると言えるでしょう。


参考文献
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。

関連項目
大日本帝国陸軍師団一覧

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