第138高射ミサイル旅団 (ウクライナ空軍)

第138高射ミサイル旅団

正式名称を第138ドニプロ高射ミサイル旅団（ウクライナ語: 138-ма зенітна ракетна бригада）と称するこの部隊は、ウクライナ空軍の防空戦力の一翼を担い、東部航空管区に所属しています。主な任務は、ドニエプル川の左岸、具体的にはザポリージャ、ドニプロペトロウシク、ポルタヴァ、スーミ、ハリコフといった広大な地域の空域を敵の侵入から守ることです。

歴史的背景と組織改編

部隊の起源は、ソビエト連邦防空軍の第138高射ミサイル連隊に遡ります。ソ連崩壊後の1992年、この連隊はウクライナの管理下に置かれ、所属する兵員たちは新たにウクライナ国民への忠誠を誓いました。

当初、第138高射ミサイル連隊は、その直属上級部隊であった第49防空軍団と共にウクライナ防空軍の指揮下に入りました。しかし、2004年にウクライナ軍の組織再編が行われ、防空軍が空軍に統合されたことに伴い、この部隊もウクライナ空軍の所属となりました。

2013年には、部隊はその規模を拡大し、連隊から旅団へと改編されました。さらに翌年の2014年1月には、それまで独立した部隊として活動していた、ニーコポリに展開していた高射ミサイル連隊（旧第301高射ミサイル連隊）と、ハリコフの高射ミサイル連隊（旧第302高射ミサイル連隊）が、この旅団に編入され、組織がさらに強化されました。

栄誉と戦績

部隊はその功績が認められ、複数の栄誉を受けています。

2021年8月23日、ウクライナ独立30周年という節目を記念し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領より名誉称号である「ドニプロフスカ」が授与されました。
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻以降、部隊はロシア連邦軍の軍用機や巡航ミサイルなど、多様な空中目標に対する迎撃・防空戦闘を継続的に展開しています。この過酷な戦いにおける「勇気と勇敢さ」が讃えられ、同年8月24日には、再びゼレンスキー大統領から「勇気と勇敢さに対する栄誉賞」が贈られました。

具体的な戦果としては、ウクライナ軍参謀本部の報告によると、2023年5月22日にはロシアの巡航ミサイルKh-101の破壊に成功しました。これは、この旅団にとって通算100機目の撃墜標的であったとされています。

近年の動向

2024年2月23日に発生した、ロシア軍のA-50早期警戒管制機の撃墜事案に関連し、ロシアの捜査当局は注目すべき発表を行いました。同年6月17日、ロシア当局は、非武装であり軍事行動中ではなかったとされる航空機をロシア領内で撃墜し、搭乗者10名を死亡させた行為がテロ罪に該当するとして、第138高射ミサイル旅団の司令官とされるミコラ・ジァマン大佐を指名手配したことを明らかにしました。この発表は、部隊の活動が敵対勢力から強く意識されている現状を示唆しています。

司令官

時期は一部不明ですが、過去および現在の司令官として以下の名前が挙げられています。

アンドリー・オレクサンドロヴィッチ大佐（2013年〜）
ヴィタリー・ヴィクトロヴィッチ大佐（2019年〜？）
* ミコラ・ジァマン大佐（？〜）

この部隊は、ウクライナ東部の空を守る重要な役割を担い、その歴史はソ連時代から現代の紛争まで続いています。

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