第15回先進国首脳会議

第15回先進国首脳会議（アルシュ・サミット）：激動期の国際協調

1989年7月14日から16日にかけて、フランスのパリ郊外ラ・デファンス地区のグランダルシュで開催された第15回先進国首脳会議は、歴史的転換期における国際協調の試金石となりました。フランス革命200周年記念行事と重なり、開発途上国首脳も多く参加したこのサミットは、「アルシュ・サミット」という愛称で広く知られています。

開催時期と背景: このサミットは、東欧革命が進行し、世界情勢が大きく変動する中で開催されました。わずか数ヶ月後にはベルリンの壁崩壊、そして米ソ冷戦終結宣言という歴史的出来事が待ち受けていました。日本においては、平成時代が始まり、昭和天皇の大喪の礼を終えたばかりで、バブル景気の絶頂期に向かう活況が経済を彩っていました。

サミットの開催地: 新凱旋門とも呼ばれるグランダルシュは、パリ大改造計画の象徴的な建造物であり、ミッテラン大統領の主導で建設されました。この場所がサミットの開催地となったことは、フランスの近代化への意欲と、国際舞台における存在感を示す象徴的な意味を持っていました。

参加首脳: 会議には、主要7ヶ国（G7）の首脳に加え、欧州委員会委員長が参加しました。

フランソワ・ミッテラン（フランス共和国大統領、議長）
ジョージ・H・W・ブッシュ（アメリカ合衆国大統領）
マーガレット・サッチャー（イギリス首相）
ヘルムート・コール（西ドイツ首相）
宇野宗佑（日本内閣総理大臣）
チリアーコ・デ・ミータ（イタリア首相）
ブライアン・マルルーニー（カナダ首相）
ジャック・ドロール（欧州委員会委員長）

主要議題: 冷戦終結への動き、東欧情勢の変化を背景に、サミットでは幅広い議題が議論されました。国際経済情勢、通貨動向、貿易問題、開発問題、環境問題、薬物問題、そしてエイズ対策などが主な議題として取り上げられました。特に、経済の効率性向上や債務問題、最貧国支援策は、世界経済の安定と発展という観点から重要な論点となりました。これらの議題は、グローバルな課題への対応を国際社会が模索する中で、具体的な政策協調の必要性を改めて浮き彫りにしました。

サミットの意義: アルシュ・サミットは、単なる国際会議にとどまらず、冷戦終結へと向かう歴史的転換期における国際協調の試金石となりました。東欧革命、ベルリンの壁崩壊といった出来事を背景に、世界経済の安定、開発途上国の支援、そして地球規模の課題への対応といった多様な問題が議論されました。このサミットでの議論や合意は、その後、国際社会における様々な取り組みや政策に影響を与えたと言えます。また、日本にとっては平成時代の最初のサミットであり、昭和天皇の大喪の礼を経て、新たな時代に向かう日本経済の姿が世界に示されたという意味でも重要な意味を持ちました。

参考文献:
Bayne, Nicholas and Robert D. Putnam. (2000). Hanging in There: The G7 and G8 Summit in Maturity and Renewal.
Reinalda, Bob and Bertjan Verbeek. (1998). Autonomous Policy Making by International Organizations.

関連情報:
G7 1989, delegations & documents
15 アルシュ・サミット（外務省ホームページ内紹介ページ）

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