第161師団 (日本軍)

第161師団：上海で編成された幻の防衛師団

第161師団は、太平洋戦争末期の1945年4月に、大日本帝国陸軍によって中国上海で臨時編成された師団です。米軍の侵攻が予想される中、沿岸部の防衛強化を目的に編成されましたが、その実戦参加は幻に終わりました。

編成の背景

1944年10月、米軍がフィリピンへの来攻を開始したことを受け、大本営は捷一号作戦を発令すると同時に、中国南部沿岸への米軍の来襲を予測し、緊急戦備に着手しました。まず、内地で仮編成された部隊が、朝鮮半島と満州を経由して鉄道輸送により中国南部に派遣されました。1945年1月下旬には、大部分が上海に到着しましたが、制海空権がなかったため、船舶輸送ができず、同地に滞留を余儀なくされました。

一方、支那派遣軍は、米軍の来攻を中部沿岸地帯、特に上海、杭州、南京を結ぶ「三角地帯」と予想し、同地域の戦備強化を急務としていました。大本営もフィリピンの戦況から、米軍の目標が硫黄島、次いで沖縄になると予測し、上海で待機していた部隊の雷州、香港への派遣を中止し、これを基幹に中部沿岸要域に師団を新設することを決定しました。これが第161師団誕生の背景です。

編成と任務

第161師団は、2個歩兵旅団が指揮する8個の独立歩兵大隊を主力とし、師団砲兵は野砲と10cm榴弾砲計12門を装備しました。1945年4月末頃までに編成を完了し、第13軍隷下に編入され、上海南部郊外にて警備と陣地構築に従事しました。同年6月に策定された支那派遣軍の対米作戦計画では、第161師団は米軍の上海上陸に際し、主力は侵攻を阻止し、予備兵力で反撃を行うとされました。

終戦とその後

1945年8月9日、ソ連が対日参戦し満州へ侵攻すると、支那派遣軍は兵力不足を補うため、第118師団とともに第161師団をモンゴル方面へ増援として派遣することを決定しました。師団は13日から順次上海を出発し、一部が鉄道輸送で南京に到着した頃に終戦を迎えました。実戦を経験することなく終戦を迎えたため、「幻の師団」とも呼ばれています。

師団概要

歴代師団長:
高橋茂寿慶 中将：1945年4月15日 - 終戦
参謀長:
小山達彦 大佐：1945年4月15日 - 終戦
最終司令部構成:
参謀長：小山達彦大佐
参謀：神谷正司中佐
最終所属部隊:
歩兵第101旅団（熊本）：江口四郎少将
独立歩兵第528大隊：宮崎幸男大尉
独立歩兵第475大隊：戸川春治少佐
独立歩兵第476大隊：植田太郎大尉
独立歩兵第477大隊：仲田常行大尉
歩兵第102旅団（熊本）：石田寿少将
独立歩兵第478大隊：大川戸辰蔵大尉
独立歩兵第479大隊：木藤重信大尉
独立歩兵第480大隊：玉置文雄大尉
独立歩兵第481大隊：小城義雄大尉
第161師団砲兵隊：川口辰蔵少佐
第161師団工兵隊：白石兼一大尉
第161師団通信隊：田中七郎大尉
第161師団輜重隊：勝間田忠重少佐
第161師団兵器勤務隊：楠木八重八大尉
第161師団第1野戦病院：落合為吉軍医少佐
第161師団第2野戦病院：高橋昭軍医少佐
第161師団病馬廠：佐々木賢一獣医大尉
第161師団防疫給水部：村田武雄軍医少佐

参考文献

防衛研修所戦史室 『昭和二十年の支那派遣軍（2）』 朝雲新聞社〈戦史叢書〉, 1973年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』 芙蓉書房出版, 1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』 第2版, 東京大学出版会, 2005年。
福川秀樹 『日本陸軍将官辞典』 芙蓉書房出版, 2001年。
外山操編 『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』 芙蓉書房出版, 1981年。

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧'>大日本帝国陸軍師団一覧

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