第2期順位戦

第2期順位戦および第7期名人戦

本記事では、昭和23年度（1948年度）に実施された将棋の公式棋戦である「第2期順位戦」と、それに続く「第7期名人戦」について解説します。順位戦は将棋界の最高位タイトルである名人位への挑戦者を決定する重要な予選システムであり、名人戦は現名人と挑戦者がタイトルをかけて争う最高峰の戦いです。この時期は、順位戦の制度に大きな変更が加えられた過渡期であり、また後の将棋界を牽引する実力者が頭角を現した時期でもあります。

第7期名人戦七番勝負

1948年4月から5月にかけて行われた第7期名人戦七番勝負では、当時の名人である塚田正夫と、第2期順位戦で挑戦権を獲得した大山康晴八段（当時）が対戦しました。結果は、塚田名人が4勝2敗で大山八段を退け、見事に名人位を防衛しました。このシリーズでは、第3局で千日手が発生し、指し直し局が行われるなど、激しい戦いが繰り広げられました。塚田名人は前年に木村義雄名人からタイトルを奪取しており、これが初の防衛戦となりました。

第2期順位戦における制度変更

第2期順位戦では、前年度から引き続き持ち点制度が採用されたものの、運営方法やクラス分け、昇降級・挑戦者決定の仕組みにおいていくつかの重要な改定が行われました。

まず、対局形式に関して、最上位クラスであるA級は従来の総当たりリーグ戦形式を維持しつつ、各対戦相手と先後それぞれ1局ずつ、計2局を戦う形式に変更されました。一方、B級およびC級においては、対局数が12局に制限されることとなりました。

また、C級は東西の2組に分割して実施されました。これは参加棋士の増加に対応するための措置と考えられます。この期の成績に基づき、翌年の第3期では上位20名がC級1組に、残りの棋士がC級2組に振り分けられることになりました。さらに、第3期までは特例として、C級2組から成績によってはB級への2階級昇級が可能であり、現在の順位戦制度とは大きく異なる点です。

順位決定の根幹となる持ち点制度では、クラス間の昇降級に伴う持ち点の加減点が、全てのクラスで30点に統一されました。これにより、クラス間の移動による得点変動のルールが明確化されました。

そして、最も注目すべき変更点の一つが、名人挑戦者決定戦の導入です。それまでは順位戦の最終的な得点順位で挑戦者が決定されていましたが、この期からは順位戦終了時点の得点上位4名によるトーナメント方式で挑戦者を決定することになりました。

順位決定方式においては、この第2期でも前年の第1期順位戦での成績に基づき初期順位が決定されたため、上位クラス（例えばA級やB級）から降級した棋士が、下位クラス（B級やC級）に残留した棋士よりも下位に位置するケースが見られました。

C級では、この期開始時点の順位に基づき、段位の昇段が行われました。具体的には、開始時の順位が16位以上の棋士は六段に、17位から32位までの棋士は五段へと昇段して第2期順位戦に臨んでいます。

名人挑戦者決定戦とB級からの挑戦者

新たに導入された名人挑戦者決定戦では、順位戦B級で11勝1敗という圧倒的な成績を収めた大山康晴七段（当時）が、得点順でA級の土居市太郎八段（8勝6敗）を上回り、挑戦者決定トーナメントに進出しました。そして、大山七段はこのトーナメントを勝ち上がり、見事に名人挑戦権を獲得しました。これは、順位戦の長い歴史の中で、唯一B級から名人挑戦者となった例であり、将棋史における画期的な出来事として特筆されます。大山は当時25歳という若さであり、この挑戦が後の大山時代を予感させるものとなりました。

各クラスの結果概要

第2期順位戦の各クラスにおける結果は以下の通りです。

A級: 名人挑戦者決定戦には3名が進出しました。降級者は1名でした。順位は前年度の得点に基づき決定されました。このクラスでは、未消化対局が1局（萩原－村上戦）ありました。
B級: 昇級者は4名で、その中に前述の大山康晴七段が含まれており、彼はそのまま名人挑戦者決定戦に進出しました。順位は前年度の成績に基づき決定されたため、前年度A級からの降級者がB級残留者より下位になるケースも見られました。
* C級: 昇級者は9名でした。下位5名は翌年の第3期C級2組に振り分けられました。C級も順位は前年度の成績に基づき決定されたため、前年度B級からの降級者がC級残留者より下位になるケースも見られました。C級は前述の通り、東西2組に分かれて対局が行われました。

まとめ

第2期順位戦および第7期名人戦は、戦後間もない時期における将棋界の制度改革を象徴する重要な棋戦でした。順位戦のルールが整備され、特に名人挑戦者決定戦の導入やC級の運営方法など、現在の順位戦につながる要素が生まれる一方で、C級からの2階級昇級など、現行制度とは異なる過渡期的な側面も見られました。また、この期にB級から史上唯一名人挑戦者となった大山康晴の活躍は、戦後の将棋界をリードする新たなスターの誕生を強く印象付けた出来事であり、その後の将棋史に大きな影響を与えました。この時期の棋戦は、制度の変遷と実力派棋士の台頭という二つの側面から、将棋史において重要な位置を占めています。

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