第3期名人戦 (将棋)

第3期名人戦は、1941年度から1942年度にかけて実施された、将棋界の最高峰タイトルを巡る戦いです。

この期から、名人への挑戦者を決定するための制度が大きく改められました。従来の方式とは異なり、複雑な段階を経て挑戦者を選出するシステムが採用されたのです。

具体的には、まず参加棋士12名を三つのグループ（A組、B組、C組）に分けて予選リーグが実施されました。各組でトップの成績を収めた棋士が次のステージへ進む権利を得ます。さらに、予選リーグで惜しくも1位を逃した棋士たちを対象とした次点復活戦が行われ、そこから一名が敗者復活として決勝リーグへの切符を手にしました。

挑戦者決定リーグには、当時の将棋界を代表するトップ棋士10名に、七段リーグを勝ち上がってきた二名の七段棋士を加えた合計12名が参加しました。なお、この七段棋士のうち二名は、リーグ戦の進行中に八段へ昇段しています。

厳しい予選リーグの結果、A組からは神田辰之助八段、B組からは土居市太郎八段、そしてC組からは渡辺東一八段がそれぞれ組の優勝者として決勝リーグ進出を決めました。加えて、次点復活戦を制したのは塚田正夫八段でした。この四名が名人挑戦権をかけた決勝リーグへと駒を進めたのです。

予選を勝ち抜いた四名による決勝リーグは、互いに譲らない熱戦が展開されました。その結果、神田辰之助八段が5勝1敗という好成績を収め、見事に決勝リーグを制しました。この優勝により、神田八段は当時の名人であった木村義雄への挑戦権を獲得したのです。

満を持して行われた名人戦七番勝負では、名人・木村義雄八段が挑戦者の神田辰之助八段を迎え撃ちました。このシリーズは、木村名人の圧倒的な強さが際立つ結果となりました。木村名人は挑戦者に対し一局も落とすことなく、ストレートの4連勝で七番勝負を制しました。この勝利により、木村義雄名人は名人位を盤石なものとし、3期連続、自身通算3期目の名人位防衛を果たしました。

一方、挑戦者として七番勝負に臨んだ神田辰之助八段には、このシリーズにおいて特別な規定がありました。もし神田八段が木村名人から一局でも勝利を収めていれば、「準名人」という称号を得て、当時の棋士の位階において八段の上位に位置づけられることになっていたのです。しかし、無念にも4連敗に終わったため、神田八段はこの「準名人」の資格を得ることはできませんでした。第3期名人戦は、新たな挑戦者決定システムと、木村名人の強さを見せつけたシリーズとして、将棋史に刻まれています。

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