第321師団

第321師団

第321師団は、第二次世界大戦末期の1945年6月に大日本帝国陸軍で編成された師団です。連合軍の本土上陸に備え、伊豆大島の守備を担いましたが、実戦を経験することなく終戦を迎えました。

編成と配置

1945年、日本軍は連合軍の日本本土上陸作戦に備え、3度にわたる大規模な動員を実施しました。その3回目にあたる5月23日の軍令陸甲第84号によって編成された19個師団の一つが第321師団です。この第三次兵備において、第321師団は伊豆大島に駐屯していた独立混成第65旅団を基幹として編成されました。

師団の編成は、独立混成第27連隊を改称した歩兵第327連隊、独立自動車第246中隊を改称した師団輜重隊、独立混成第65旅団野戦病院を改称した師団野戦病院などにより構成されました。6月上旬に編成を完了した師団は、関東地方の防衛を担当する第12方面軍の指揮下に入り、その大部分は船で伊豆大島へと輸送されました。師団司令部は6月10日に大島に上陸し、翌11日からは伊豆大島を作戦地域として防衛任務を開始しました。6月26日までに、大部分の部隊の輸送が完了しました。

伊豆大島には、もともと独立歩兵第670大隊、独立重砲兵第6大隊第1中隊、特設水上勤務第105中隊が配備されていましたが、これらも師団の編成に組み込まれました。ただし、独立歩兵第670大隊は7月10日に独立混成第66旅団の指揮下へ移り、三宅島の防衛に転じました。また、東京湾要塞重砲兵連隊の第3大隊も、師団の指揮下に入りました。大島の北西部には飛行場があり、師団の指揮下ではない第71飛行場中隊が配置されていました。

師団の各部隊は、敵の上陸に備え、島の海岸線から斜面にかけて各地に陣地を構築しました。特に飛行場のある北西部と、比較的傾斜が緩やかな南東部では、8月15日までに陣地構築がほぼ完了しましたが、それ以外の場所では遅れていました。

5月23日の動員発令時の計画定員は11,607名、馬匹462頭でしたが、8月15日時点では14,190名にまで増強されていました。

終戦

8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦は終結しました。第321師団の各部隊は、9月から10月にかけて順次復員しました。10月11日には、師団司令部と通信隊が復員し、第321師団は解散しました。

師団長であった矢崎勘十中将が終戦業務処理委員長となり、一部の人員が戦後処理にあたりました。彼らは、兵器を進駐軍に引き渡し、その他の物資を主に東京都の大島支庁に払い下げました。

師団の構成

師団長：矢崎勘十中将（1945年6月1日 - 終戦）
参謀長：鵜飼仁大佐（1945年6月1日 - 終戦）

師団の兵員数は、計画上は11,607名でした。

以下に、師団の主要な構成部隊と装備を示します。

第321師団司令部（磯27720、東部第6部隊） - 475名、馬匹27
歩兵第325連隊（磯27721、東部第83部隊） - 乙。3,042名、馬匹104
歩兵第326連隊（磯27722、東部第63部隊） - 乙。3,042名、馬匹104
歩兵第327連隊（磯27723、東部第64部隊） - 乙。3,042名、馬匹104
第321師団砲兵隊（磯277204、東部第12部隊） - 502名、馬匹79。九四式山砲8門、十糎加農4門
第321師団工兵隊（磯27725、東部第14部隊） - 乙。800名、馬匹29
第321師団通信隊（磯27726、東部第16部隊） - 乙。280名、馬匹15
第321師団輜重中隊（磯27727、東部第17部隊） - 183名、自動車50
第321師団野戦病院（磯27728、東部第6部隊） - 241名、自動車3
独立歩兵第670大隊 - 878名
東京湾要塞重砲兵連隊第3大隊 - 二十八糎榴弾砲2門、九六式十五糎加農砲4門、七年式十糎加農4門
独立重砲兵第6大隊第1中隊 - 195名。十五糎榴弾砲4門
特設水上勤務第105中隊 - 61名
第5工事隊
(迫撃砲第5大隊) - 1,465名、馬匹471、12糎迫撃砲18門

なお、編成表には第5工事隊と迫撃砲第5大隊の両方が記載されている資料と、どちらか一方のみが記載されている資料があり、詳細な編成については不明な点があります。

参考文献

防衛庁防衛研修所戦史室『本土決戦準備』(1)、（戦史叢書）、朝雲新聞社、1971年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典 第2版』東京大学出版会、2005年。

関連項目

* 大日本帝国陸軍師団一覧

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