九四式山砲

九四式山砲について

九四式山砲（きゅうよんしきさんぽう）は、1930年代の初めから中頃にかけて、大日本帝国陸軍によって開発され、正式に採用された山砲です。この兵器は、当時の陸軍主力であった四一式山砲の後継として位置づけられ、火力と安定性の向上が求められました。

開発の背景

従来使用されていた四一式山砲には、他の野戦砲と比較して火力が劣るという弱点がありました。また、発射時の安定性も良好ではありませんでした。これらの問題を解決するために、1920年（大正9年）に「四一式山砲よりも火力が強く、安定性に優れた式の研究を行う」という方針のもと、九四式山砲の開発が始まりました。

設計と特徴

九四式山砲は、より軽量で分解しやすい設計がなされており、特に近代的な開脚式砲架が採用されています。このことにより、最大射程での射撃安定性が向上し、射撃精度も高まりました。1943年のイギリス軍による鹵獲調査によると、九四式山砲は迅速に組み立てたり分解したりできる仕様に設計されており、11個の部品に分解可能です。また、駐退装置や後座装置、復位装置を備えており、精密さと威力を兼ね備えた兵器として評価されています。

実戦運用

1935年に制式が制定されると、九四式山砲は主に師団砲兵部隊の主力火砲として導入され、四一式山砲を段階的に更新していきました。しかし、当時の日本の国力の制約から、完全に置き換わることはありませんでした。太平洋戦争では、地形や道路状況からしばしば野砲兵連隊に配備され、前線に投入されました。実戦部隊では、部分的な改修も行われ続けました。

射撃能力

九四式山砲は対戦車戦闘にも使用され、75mmから100mmの装甲を貫通できる二式穿甲榴弾は、昭和20年度中に約44,000発が製造されました。アメリカ陸軍の資料によれば、徹甲弾を使用することで300ヤード（約274メートル）で2.8インチ（約71mm）の装甲を、1000ヤード（約914メートル）で2.3インチ（約58mm）を貫通できることが記録されています。また、成形炸薬弾使用時には3.5インチ（約89mm）の装甲も貫通可能でした。

後の使用と評価

九四式山砲は性能面でヨーロッパの同等の山砲に劣る部分もありましたが、日本陸軍の要求を満たす設計と互換性から評価されました。1945年の日本軍降伏後には、国民革命軍が239門を接収し、自軍に配備しました。また、人民解放軍も放棄された九四式山砲を接収し、国共内戦中や朝鮮戦争にも投入されました。1950年代には長期間の使用に伴い、部品の劣化も見られ、最終的にソ連製の砲によって置き換えられていきました。その後、九四式山砲は改造され、1980年代まで人民解放軍の主力火砲として使用され続けました。オリジナルとの大きな違いは、木製ホイールにゴムが覆われ、電気プライマーが追加された点です。

年譜

• - 1931年（昭和6年）: 試製予算要求
• - 1932年（昭和7年）9月: 第1号砲完成
• - 1934年（昭和9年）9月: 試製九四式山砲完成（4門）
• - 1935年（昭和10年）3月: 野砲校で実用試験を受ける
• - 同年4月: 制式上申
• - 同年11月: 制式制定

九四式山砲は、陸軍の発展を支える重要な兵器の一つであり、さまざまな戦局で活躍を見せました。

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