第43回高松宮杯競輪

第43回高松宮杯競輪

1992年5月30日から6月4日にかけて、大津びわこ競輪場で開催された第43回高松宮杯競輪は、競輪ファンにとって記憶に残る大会となりました。この大会は、当時の競輪界を代表する選手たちが激戦を繰り広げただけでなく、一人の偉大な選手の引退というドラマも含まれていたからです。

決勝までの道のり

この年の3月に行われた日本選手権競輪で特別競輪初優勝を飾った吉岡稔真は、その勢いのまま、高松宮杯直前の寛仁親王牌でも完全優勝を果たし、圧倒的な本命として注目を集めていました。一方、中野浩一は、寛仁親王牌で吉岡の番手を務めながらも一度も先着することができず、高松宮杯で吉岡を倒し、悲願の宮杯初優勝を果たすことを目標に燃えていました。

中野は、初戦の特選と西日本王座決定戦（準決勝）で吉岡をマークしましたが、吉岡の圧倒的な強さを前に、苦戦を強いられました。特に準決勝では、決勝進出を確実にするため、ゴール直前まで吉岡を泳がせる作戦に出ましたが、吉岡は5着に終わり、決勝進出は東日本王座決定戦の結果次第となりました。結果、東日本準決勝で5着となった滝澤正光が、前2走の成績で吉岡を上回り決勝進出を果たしました。

決勝戦

6月4日、決勝戦は、三宅、中野、井上のラインが先頭に立ち、それを滝澤、東出、梶應のラインが抑え、さらに神山、尾崎、山口のラインが仕掛けるという目まぐるしい展開で幕を開けました。最終ホーム付近で神山が先行体制に入り、滝澤は神山の番手をキープ、尾崎との競り合いを制しました。後方にいた中野、井上は、最終2センターから捲りを仕掛け、滝澤が4コーナーで神山を交わし先頭に立ちました。最後の直線では、逃げる滝澤、捲る中野、追い込む井上が激しい競り合いを繰り広げましたが、滝澤が僅かに中野を抑え、見事優勝を飾りました。2着は中野、3着は井上という結果になりました。

このレースは、当時競輪界の「三強」と呼ばれた中野、井上、滝澤の3人が表彰台を独占した、最初で最後の出来事となりました。競輪史に残る名勝負として、今も語り継がれています。

中野浩一引退

ゴール後、中野は悔しさを露わにしましたが、その翌日、NHKの朝のニュースで、中野がこのレースを最後に引退することが報道され、競輪界に衝撃が走りました。この報道は正式発表ではなかったものの、大きな波紋を呼びました。その後、中野は記者会見を開き、正式に引退を発表しました。


この高松宮杯競輪は、吉岡稔真と中野浩一という二人のスター選手を中心に、ドラマチックな展開を見せ、競輪ファンに深い感動を与えました。特に、中野浩一の引退という出来事は、多くのファンにとって忘れられない出来事となりました。

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