第46回先進国首脳会議

第46回先進国首脳会議（G7サミット）

第46回先進国首脳会議（G7サミット）は、2020年にアメリカ合衆国での開催が予定されていた主要国の首脳会合です。当初、同年6月10日から12日にかけて、メリーランド州にある大統領保養地、キャンプ・デービッドで開催される計画でした。しかし、世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックにより、最終的に開催は中止されました。

異例の開催地選定

このサミットは、開催地選定の段階から波紋を呼びました。当初、シークレットサービスが複数の候補地を検討し、ハワイやユタなどが有力視されていました。しかし、当時のドナルド・トランプ大統領の強い意向により、自身が所有・経営するフロリダ州マイアミのリゾート施設「トランプ・ナショナル・ドラル」が候補地に浮上しました。そして、2019年10月には、このリゾートが正式な開催地に決定したと発表されました。この決定に対し、大統領が自らの事業から個人的な利益を得ようとしているのではないかという、利益相反の疑いが国内外から強く指摘され、超党派からの激しい批判が巻き起こりました。当時、トランプ大統領は既に他の自身のホテル利用に関する訴訟を抱えており、法律専門家からも同様の憲法違反にあたる可能性が指摘されていました。トランプ大統領は自身の決定を擁護しましたが、批判の高まりを受け、わずか2日後にトランプ・ナショナル・ドラルでの開催決定を撤回するという異例の展開となりました。大統領は、この撤回を「メディアと民主党の狂った不合理な敵意」によるものだと非難しました。その後、新たな開催地として、過去にもG7サミットが開催された実績のあるキャンプ・デービッドが再決定されました。

パンデミックによる延期と終焉

2020年に入り、新型コロナウイルスの世界的流行が深刻化すると、サミットの開催にも影響が出始めました。同年3月、トランプ大統領は感染拡大を理由に、キャンプ・デービッドでの対面形式での開催を中止し、テレビ会議形式で実施すると発表しました。しかし、大統領はその後も対面での開催にこだわりを見せ、ホワイトハウスかキャンプ・デービッドでの実施を示唆しました。5月下旬には、ドイツのアンゲラ・メルケル首相がパンデミック継続を理由に対面でのサミット参加を辞退する意向を表明しましたが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やイギリスのボリス・ジョンソン首相は対面での会合を支持しました。こうした状況を踏まえ、トランプ大統領は5月30日、サミットの開催時期を同年9月以降に延期すると発表しました。さらに8月には、同年11月に予定されていた自身の大統領選挙後への再延期を示唆しましたが、結局、2020年中に第46回G7サミットが開催されることはありませんでした。

「G7+」構想とロシア招待を巡る議論

議長国であったトランプ大統領は、G7の枠組みが「時代遅れ」であり、世界の現状を十分に反映していないとの見解を示しました。そして、G7のメンバーである7か国に加え、インド、オーストラリア、ブラジル、韓国、そしてかつてG8の一員だったロシアの代表を招待する「G7+」構想を打ち出しました。これは、中国に対抗するためのブロック形成を意図したものとも伝えられています。2020年6月上旬、インドのナレンドラ・モディ首相、オーストラリアのスコット・モリソン首相、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領、韓国の文在寅大統領は招待を受諾しました。特に議論となったのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を招待する意向を示したことです。ロシアは2014年のクリミア併合などを受け、G8からG7に戻された経緯があり、G7への参加資格を停止されていました。このロシア招待案に対しては、カナダやイギリスが強く反対の姿勢を示しました。カナダのジャスティン・トルドー首相は、ロシアが国際ルールを無視し続けている限りG7の枠外に留まるべきだと主張し、イギリス政府もロシアが攻撃的な行動を止めるべきだと強調しました。欧州連合（EU）もロシアのG7再参加に反対し、EUの外務・安全保障政策上級代表であるジョセップ・ボレル氏は、トランプ大統領にはG7の加盟国やその範囲を変更する権限はないとの見解を示しました。トランプ大統領は8月の時点でも、プーチン大統領を招待するかどうかはまだ最終決定していないと述べていました。

もし実現していれば

もしこの第46回G7サミットが当初の予定通り開催されていれば、日本の安倍晋三首相、アメリカのドナルド・トランプ大統領、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相にとっては、それぞれの任期中における最後のG7サミットとなるはずでした。会議の主な議題としては、気候変動についても話し合われる予定でしたが、トランプ政権下では過去のサミットでもこのテーマへの関心は低く、議題として大きく取り上げられる可能性は低いと見られていました。

結局、2020年にG7首脳が直接顔を合わせる機会は実現せず、第46回サミットは中止という形で幕を閉じました。開催地の選定を巡る騒動や、パンデミックによる度重なる延期と形式変更の試み、そして招待国の拡大やロシアの復帰を巡る議論など、異例の経緯を辿ったサミットとして記憶されることとなりました。

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