第49回都市対抗野球大会

1978年夏、東京の後楽園球場を舞台に、第49回都市対抗野球大会が盛大に開催されました。この大会は、7月29日から8月8日までの11日間にわたり、白熱した戦いが繰り広げられ、多くの野球ファンを魅了しました。

制度変更と注目すべき初出場

この年の都市対抗野球では、長年続いた補強選手制度に大きな変更が加えられました。従来の制度では予選の途中から補強選手を加えることができましたが、第49回大会からは、予選は所属チームの選手のみで戦い抜き、一次予選を突破した後に最大5人まで他チームからの補強が認められる形となりました。これにより、各チームの予選段階での自力やチーム力がより重要視されることになりました。

本大会には、光市・新日鐵光、足利市・全足利クラブ、神戸市・川崎製鉄神戸の3チームが初めて出場しました。中でも特に大きな注目を集めたのは、全足利クラブの存在です。戦後の社会人野球は企業チームが隆盛を極めていましたが、全足利クラブは企業を母体としない純粋なクラブチームとして、激戦の北関東予選を勝ち抜いて本大会への出場権を獲得したのです。クラブチームが都市対抗の全国大会に出場するのは、1956年の第27回大会における新潟コンマーシャル倶楽部以来、実に22年ぶりの出来事でした。興味深いことに、企業母体を持たないクラブチームが再び都市対抗の表舞台に立つのは、この後27年間なく、2005年の第76回大会にNOMOベースボールクラブが出場するまで待たなければなりませんでした。

数々の記録が誕生

第49回大会は、大会史に名を刻む記録が多数生まれたことでも特筆されます。
まず、東京都代表の東京ガスのエース、松沼博久投手が、予選での登板において圧倒的な投球を見せ、1試合（9イニング）における最多奪三振記録を更新しました。その記録は17奪三振に達し、さらにその中で7者連続奪三振という記録も同時に樹立しました。これらの松沼投手の記録は、現在に至るまで都市対抗野球大会の最多記録として破られていません。
また、名古屋市代表の三菱名古屋の打者である北村照文選手が、大会史上初となるサイクル安打を達成しました。これは1試合で単打、二塁打、三塁打、本塁打をすべて放つという、打者にとって非常に難易度の高い偉業です。

川崎市勢が激突した決勝戦

大会のクライマックスである決勝戦は、8月8日に後楽園球場で行われました。この年の決勝は、同じ神奈川県川崎市を本拠地とする日本鋼管と東芝が対戦するという、異例のカードとなりました。都市対抗野球の決勝で、同じ都市に属するチーム同士が顔を合わせるのは、1951年の第22回大会における大阪市のチーム以来、27年ぶり史上2度目のことでした。
試合は、東芝の先発、黒紙義弘投手の圧巻のピッチングで幕を開けました。黒紙投手は、日本鋼管打線を最後まで寄せ付けず、無四球での完封勝利を飾りました。この素晴らしい投球とチームの勝利により、東芝は創部から20年目、そして6回目の本大会出場にして、ついに悲願の都市対抗初優勝を成し遂げました。

輝きを放った選手たちとチーム

大会の締めくくりには、個人やチームの功績を称える表彰が行われました。

- 橋戸賞（最高殊勲選手賞）には、決勝戦で完封勝利を飾りチームを初優勝に導いた黒紙義弘投手（東芝）が選ばれました。
- 久慈賞（敢闘賞）は、決勝で敗れはしたものの、チームの決勝進出に大きく貢献した木田勇投手（日本鋼管）に贈られました。
- 小野賞（最も郷土色豊かな応援を行ったチーム）は、鈴鹿市の本田技研鈴鹿チームが受賞しました。
- 若獅子賞（最優秀新人選手賞）は、遊撃手として活躍した山本文博選手（新日鐵室蘭、北海道拓殖銀行からの補強）が受賞しました。

また、長年にわたり大会に出場し続けた功労者として、幡野正秋（三協精機）、林伸男（本田技研鈴鹿、西濃運輸からの補強）、土佐秀夫（三菱重工神戸、新日鐵広畑からの補強）、林幸義（三菱重工長崎、九州産交からの補強）の4選手が10年連続出場選手として表彰されました。

球場を熱狂させた応援団にもコンクールが行われ、最優秀賞は選手も小野賞を受賞した本田技研鈴鹿の応援団に輝きました。優秀賞は熊谷組と優勝した東芝、敢闘賞は東京ガスが受賞し、大会を彩る応援も高く評価されました。

第49回都市対抗野球大会は、制度変更、クラブチームの躍進、不滅の記録、そして記憶に残る決勝戦など、多くの側面で社会人野球の歴史に深く刻まれる大会となりました。

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