第5回先進国首脳会議

第5回先進国首脳会議（東京サミット）

1979年（昭和54年）6月28日から29日までの二日間にわたり、日本の首都である東京都で開催された主要先進7カ国（G7）および欧州共同体（EC）の首脳会議です。正式名称は「第5回先進国首脳会議」ですが、開催地から「東京サミット」として広く知られています。この会議が画期的なのは、先進国首脳会議が1975年にフランスのランブイエで始まって以来、初めてアジア太平洋地域の国、すなわち日本で開催されたという点にあります。会場は、東京都港区にある美しい歴史的建造物、迎賓館赤坂離宮が使用されました。

出席首脳

東京サミットには、当時の世界情勢において重要な役割を担っていた主要国のリーダーが集結しました。会議の議長は、開催国である日本の内閣総理大臣、大平正芳が務めました。他の参加首脳は以下の通りです。

フランス共和国大統領：ヴァレリー・ジスカール・デスタン
アメリカ合衆国大統領：ジミー・カーター
イギリス首相：マーガレット・サッチャー
西ドイツ首相：ヘルムート・シュミット
イタリア首相：ジュリオ・アンドレオッティ
カナダ首相：ジョー・クラーク

これら7カ国の首脳に加え、欧州共同体（EC）からは欧州委員会委員長のロイ・ジェンキンスが出席し、ECとしての立場から協議に参加しました。これらの顔ぶれは、当時の西側主要国の政治体制を反映したものであり、歴史的な会合となりました。

主な議題

東京サミットが開催された1979年は、世界経済が第二次石油危機に直面し、エネルギー問題が国際社会における最大の懸念事項となっていました。特に、1978年末から1979年初頭にかけて発生したイランのイスラム革命は、中東情勢を不安定化させ、原油供給に深刻な影響を与えていました。

このような背景から、東京サミットの中心的な議題は、まさにこの石油問題、すなわちエネルギー危機への対応でした。参加国首脳は、高騰する原油価格への対処、安定した石油供給ルートの確保、そして何よりも石油への依存度を下げるための省エネルギーの推進や代替エネルギーの開発について集中的な議論を交わしました。会議では、各国が石油輸入量の削減目標を設定するなど、具体的な数値目標を伴う形でエネルギー消費抑制への国際協調を図ることが目指されました。これは、エネルギー安全保障が世界経済の安定に不可欠であることを強く認識した結果と言えます。

エネルギー問題以外にも、根強いインフレーションへの対策、国際貿易の円滑化、開発途上国支援、さらには国際的なテロリズムへの共同対処など、当時の国際社会が直面していた様々な課題についても意見が交わされました。サミットは、単一の危機だけでなく、地球規模の複合的な問題に対して主要国が連携して取り組むための重要な調整の場となりました。

関連事件

サミット開催を間近に控えた1979年6月8日未明には、会場となる迎賓館の正門に向けて無人の小型トラックが突進し、炎上するという事件が発生しました。この事件による負傷者は幸いにも出ませんでしたが、テロの可能性も示唆される事態であり、会議期間中の警備体制が改めて厳重化されるきっかけとなりました。後に、日本の過激派組織である中核派が犯行声明を出しており、サミット開催に反対する意思表示であったと考えられています。

東京サミットは、エネルギー危機という困難な状況下で主要先進国が協力し、その克服に向けて具体的な方策を模索した重要な会議でした。同時に、アジアで初めて開催されたサミットとして、国際政治における日本の存在感を高める上で大きな意義を持つ出来事となりました。

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