第5回社会人野球日本選手権大会

第5回社会人野球日本選手権大会

1978年（昭和53年）の晩秋、10月29日から11月5日までの期間、社会人野球の頂点を決める第5回日本選手権大会が、野球の聖地たる阪神甲子園球場にて開催されました。

大会の背景と特異性

この年の夏に繰り広げられた都市対抗野球大会の決勝で激突した川崎市を代表する両チーム、東芝と日本鋼管は、いずれも今大会の予選で涙を飲み、本大会への出場は叶いませんでした。全国の強豪がしのぎを削る社会人野球の厚みを示す一幕と言えるでしょう。

今大会で特筆すべきは、東北地区から初出場を果たした八戸市水道部の存在です。地方公共団体がチームとして都市対抗野球または日本選手権の本大会に出場したのは、この八戸市水道部が史上唯一の事例であり、後にも先にも類を見ない極めて希少な出来事として、社会人野球史にその名を刻んでいます。

また、この第5回大会からは、決勝戦の模様がNHK教育テレビ（現在のEテレ）で全国に中継されるようになり、より多くの野球ファンが社会人野球の最高峰の戦いを視聴できるようになった点も、大会の発展における重要な節目となりました。

北海道拓殖銀行、劇的な初優勝

大会を制し、初の栄冠に輝いたのは、北海道地区代表の北海道拓殖銀行でした。彼らの勝ち上がりはまさに劇的と呼ぶにふさわしいものでした。準決勝までの4試合全てにおいて、先行を許しながらも粘り強く戦い抜き、逆転勝利を収めるという驚異的な粘り強さを見せました。

迎えた決勝戦の相手は、準決勝まで3試合連続完封、防御率0.50という圧倒的な成績を残していた東京ガスのエース、松沼博久投手でした。北海道拓殖銀行打線も松沼投手の前に苦戦を強いられますが、最終回となる9回、ついに均衡を破ります。値千金の犠牲フライによって決勝点を奪い、最少得点差で激戦を制しました。この勝利により、北海道拓殖銀行は念願の日本選手権初優勝を達成しました。

大会を彩った顔ぶれと記録

この大会で特に活躍が認められた選手たちには、以下の表彰が贈られました。

最高殊勲選手賞: 高岡 茂夫 選手（北海道拓殖銀行・二塁手）
敢闘賞: 松沼 博久 選手（東京ガス・投手）
打撃賞（首位打者賞）: 小林 達也 選手（日産自動車・外野手）

また、投手では福間納（松下電器）、真鍋義之（川崎製鉄神戸）、川瀬隆俊（大昭和製紙北海道）、山口敏男（北海道拓殖銀行）らが、野手では佐野登（東京ガス）、村上忠則（大昭和製紙北海道）、岩沢建一（日産自動車）、安岡直記（東京ガス）、坂田竹二（北海道拓殖銀行）、福岡清介（日産自動車）、田中伸樹（東京ガス）、山本文博（北海道拓殖銀行）、渡辺茂（東京ガス）、高鍋均（松下電器）、小島和彦（北海道拓殖銀行）など、多くの選手が大会優秀選手に選ばれ、熱戦を繰り広げました。

大会中にはいくつかの記録も生まれました。

最短試合時間: 1時間40分（2回戦 神戸製鋼 対 電電九州戦）
1イニングチーム最多三塁打: 2（タイ記録、東京ガスが1回戦 対 三菱重工広島戦で記録）
連続試合完封: 2（タイ記録、東京ガス・松沼博久投手が準々決勝、準決勝で記録）

第5回社会人野球日本選手権大会は、地方公共団体チームの歴史的な出場、決勝戦のテレビ中継開始、そして北海道拓殖銀行の粘り強い戦いによる劇的な初優勝など、多くの記憶に残る出来事があった大会として語り継がれています。

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