第5潜水戦隊 (ドイツ海軍)

第5潜水隊群（5. Unterseebootflottille）

ドイツ海軍が第二次世界大戦中に運用したUボート部隊の一つに、第5潜水隊群（5. Unterseebootflottille）があります。この部隊は、その歴史の中で役割と性質を大きく変えながら存在した、ドイツ潜水艦戦の一端を担う組織でした。

名称の由来と第一次設立

部隊の名称には、第一次世界大戦におけるドイツ海軍の英雄の記憶が込められています。1918年10月28日、潜水艦U 116の艦長であったハンス・ヨアヒム・エムスマン中尉は、搭乗中の艦が機雷に接触して沈没した際に戦死しました。彼の勇敢さを称え、部隊は最初に「Unterseebootsflottille Emsmann」と名付けられました。この名称は、後に第5潜水隊群へと引き継がれることになります。

公式に第5潜水隊群が設立されたのは、第二次世界大戦勃発の約1年前となる1938年12月1日のことです。設立場所はドイツ北部の主要な港湾都市であるキールでした。この時期、ドイツはヴェルサイユ条約による軍備制限を脱し、特に潜水艦部隊の再建・拡充を急速に進めていました。部隊の初代指揮官には、ハンス＝ルドルフ・レーズィンク少佐が就任しました。設立当初、この部隊は増加するUボートとその乗組員を受け入れ、実戦投入可能な状態に整える役割を担う実戦部隊の一つとして期待されていたと考えられます。

短期間での活動と最初の解隊

しかし、設立されたばかりの第5潜水隊群の実戦部隊としての活動期間は、非常に短いものとなりました。設立からわずか1年強が経過した1940年1月には、部隊は一旦解隊される決定が下されます。所属していたUボートは全て、他の潜水艦部隊、特に第1潜水隊群へと転属させられました。この時期は第二次世界大戦が始まった直後であり、ドイツ海軍は戦局に合わせて部隊の再編成や重点配備を進めていた時期にあたります。第5潜水隊群の最初の役割は、この組織改編の中で幕を閉じました。

訓練隊群としての再設立

第5潜水隊群が再びその名を冠して編成されるのは、最初の解隊から約1年半が経過した後のことです。1941年6月、再びキールにおいて部隊は再設立されました。この時の指揮官には、カール＝ハインツ・メーレ少佐が就任しました。しかし、この再設立された第5潜水隊群は、以前のような実戦部隊としての役割ではなく、「訓練隊群（Ausbildungsflottille）」として明確に位置づけられました。

第二次世界大戦が本格化し、Uボートによる通商破壊戦が重要な戦略となる中で、ドイツ海軍は大量のUボートと、それらを運用する熟練した乗組員を必要としていました。しかし、潜水艦という特殊な兵器の乗組員を育成するには、専門的な訓練が不可欠です。第5潜水隊群は、この増大する訓練ニーズに応えるための重要な機関となりました。

訓練活動と終焉

訓練隊群として再設立された第5潜水隊群は、終戦まで一貫してキールを母港とし、Uボート乗組員に対する基礎訓練や advanced な訓練を担当しました。新たな乗組員候補生はここで潜水艦の操縦、攻撃、航法、通信などの技術を習得し、前線へと送り出されていきました。キールは大規模な造船所や補給施設を有する軍港であり、訓練活動を行う上でも非常に適した拠点でした。

部隊は1941年6月の再設立から、第二次世界大戦がドイツの降伏によって終結する1945年5月まで、訓練部隊としての任務を継続しました。ドイツ海軍全体の解体に伴い、第5潜水隊群もまたその歴史に幕を閉じることになります。短期間の実戦部隊、そして長期間にわたる重要な訓練部隊として、第5潜水隊群は第二次世界大戦中のドイツUボート部隊の歴史において、独自の軌跡をたどった部隊と言えるでしょう。

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