第57回都市対抗野球大会

1986年（昭和61年）の夏、7月23日から8月2日までの期間、野球の聖地である後楽園球場を舞台に、社会人野球日本一を決める第57回都市対抗野球大会が盛大に開催されました。

この大会の大きな特徴として、金属バットへの順応が進んだことにより、例年以上に多くのホームランが飛び交う打撃戦となったことが挙げられます。大会期間中に放たれた通算本塁打数は83本に達し、これは第55回大会の記録（78本）を塗り替える新記録となりました。個人の活躍では、浜松市の日本楽器に所属する内野手、武居邦生選手が、2回戦で自身の通算10本目となる本塁打を放ち、従来の大会個人通算本塁打記録（9本）を更新し、特別表彰を受けました。また、1試合で3本塁打を放つ選手が2人現れ、当時の大会記録に並ぶ記録が生まれました。さらに、準々決勝の三菱重工広島対日本鋼管戦では、両チーム合わせて10本塁打という、これも当時の大会記録となる乱打戦が展開されるなど、全体として投手にとっては非常に厳しい、打者有利の大会であったと言えるでしょう。

今大会には、大阪市の大阪ガスと神戸市の阿部企業という2チームが初めて都市対抗野球の舞台に立ちました。大阪ガスは、浦和市の日本通運、千葉市の川崎製鉄千葉、そして浜松市の日本楽器といった強力なチームを次々と打ち破り、見事ベスト4進出を果たすという快進撃を見せました。一方の阿部企業も、川崎市の三菱自動車川崎や郡山市のヨークベニマルを立て続けに下してベスト8入りを果たすなど、初出場ながらもその存在感を示し、大会に大きな盛り上がりをもたらしました。

こうした初出場の新勢力に対して、歴史ある横浜市の日本石油が古豪の力を見せつけました。かつては14年連続出場という輝かしい記録を持つ名門でありながら、近年は本大会出場を逃すなど、やや低迷期を迎えていました。しかし、今大会では打撃陣が力を発揮してチームを牽引し、準々決勝で勢いのある阿部企業を、そして準決勝では快進撃を続けた大阪ガスを破り、見事決勝の舞台へとたどり着きました。

決勝戦は8月2日に行われ、ここまで無敗で勝ち上がってきた日本石油と、今大会が初の決勝進出となった金沢市のNTT北陸が対戦しました。試合は最後まで勝敗の行方が分からない緊迫した接戦となりました。日本石油は保戸田投手が先発し、NTT北陸の上原投手と投げ合いました。試合中には、NTT北陸から杉山選手、片山選手、間瀬選手の3本、日本石油から大久保選手の1本と、両チームから本塁打が飛び出しましたが、最終的に日本石油がNTT北陸を振り切り勝利。実に19年ぶりとなる6回目の都市対抗優勝を果たし、黒獅子旗を横浜に持ち帰りました。

大会後には、活躍した選手やチームに対し様々な表彰が行われました。最も権威ある橋戸賞には、優勝した日本石油の岡田邦彦投手が選ばれました。久慈賞には、準優勝チームから最も優秀な選手に贈られ、NTT北陸（新日鐵名古屋からの補強選手）の杉山孝一左翼手が受賞しました。小野賞は、初出場ながらベスト4に進出し大会を盛り上げた大阪市の大阪ガスチームに贈られました。また、将来が期待される若手選手に贈られる若獅子賞には、日本石油から若井基安二塁手と鈴木慶裕中堅手の2名が選ばれました。長年にわたり都市対抗野球に出場し貢献した多数の選手も、10年連続出場として表彰されました。

野球のプレーだけでなく、応援も見どころの一つである都市対抗野球の応援団コンクールでは、大阪ガスが最優秀賞を獲得しました。優秀賞は日本石油とプリンスホテル、敢闘賞は川崎製鉄千葉、特別賞はNTT北陸と国鉄名古屋がそれぞれ受賞し、スタンドも熱く盛り上がりました。

第57回大会は、金属バット時代の幕開けを告げるような打撃戦、初出場チームの躍進、そして古豪・日本石油の復活優勝と、多くの話題を提供した記憶に残る大会となりました。

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