第6回先進国首脳会議

第6回先進国首脳会議（ヴェネチア・サミット）

1980年6月22日から23日にかけて、イタリアの水の都ヴェネツィアで、第6回先進国首脳会議、通称「ヴェネチア・サミット」が開催されました。世界を代表する主要先進国の首脳が一堂に会し、当時の世界情勢や経済問題などについて意見を交わす重要な機会でした。

しかし、この会議は開催前から、そして開催中も、日本の国内情勢によって異例ずくめの展開をたどることになります。

会議を覆った日本の悲劇

ヴェネチア・サミットの開催を目前にしたわずか10日前、日本に衝撃的なニュースが走りました。当時内閣総理大臣を務めていた大平正芳氏が、参議院選挙との衆議院解散による史上初の衆参同日選挙の選挙戦の渦中に急逝したのです。現職の総理大臣が国際会議の直前に亡くなるという、日本の憲政史上でも類を見ない事態となりました。

この予期せぬ事態を受けて、日本政府は対応に迫られました。本来、先進国首脳会議には各国の首脳が出席するのが慣例ですが、総理大臣を失った日本では、急遽、大来佐武郎外務大臣が故大平総理の代理として、日本代表団のトップとしてヴェネツィアへ向かうことになりました。さらに、外務大臣が首脳会議に出席するため、通常外務大臣が出席する外相会議には、急遽同行が決定した佐々木義武通商産業大臣が代理として出席するという、異例の二重の代理体制が敷かれました。

異例の幕開けと会議中の出来事

ヴェネチアに集まった各国首脳は、会議の開始にあたり、日本の大平総理の死に対し弔意を示すため、黙祷を捧げました。これは、国際会議の冒頭としては極めて珍しい静かで厳粛な一幕でした。

会議が進行する最中、海を越えた日本から、衆参同日選挙の開票結果が続々と伝わってきました。結果は、与党である自由民主党の歴史的な大勝でした。首相が選挙戦中に急逝するという逆風の中で行われた選挙にもかかわらず、国民は与党に圧倒的な信任を与えたのです。

翌日の全体会議では、この選挙結果が大きな話題となりました。本来、国際的な経済や安全保障といったテーマが議論されるべき場で、出席していた日本の閣僚、具体的には留守中に無事再選を果たした竹下登大蔵大臣と、代理で出席していた佐々木通商産業大臣が、異例にも他国の首脳たちから日本の選挙での勝利を祝福されるという光景が繰り広げられました。これは、首脳会議の歴史においても、日本の国内政治が国際舞台にこれほどまでに色濃く反映された極めて珍しい事例と言えるでしょう。

出席首脳

ヴェネチア・サミットには、以下の首脳や代表者が出席しました。

フランチェスコ・コシガ（議長、イタリア首相）
ヴァレリー・ジスカール・デスタン（フランス共和国大統領）
ジミー・カーター（アメリカ合衆国大統領）
マーガレット・サッチャー（イギリス首相）
ヘルムート・シュミット（西ドイツ首相）
大来佐武郎（日本国外相、大平総理代理）
ピエール・トルドー（カナダ首相）
ロイ・ジェンキンス（欧州委員会委員長）

会議自体は、当時の世界経済を取り巻く課題、特に第二次オイルショック後のエネルギー問題やインフレーションなどが主要な議題となったと推測されますが、インプット情報からは具体的な議題の詳細を特定することはできません。

ヴェネチア・サミットは、日本の総理大臣の急逝とそれに伴う異例の代理出席、そして会議中に日本の国内選挙の結果が伝わり、その出席者が祝福されるという前代未聞の展開を経て、歴史上でも非常に独特な位置を占める会議となりました。日本の激動の政治状況が、国際会議の舞台にも波紋を広げた出来事として記憶されています。

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