衆参同日選挙
衆参同日選挙（しゅうさんどうじつせんきょ）とは、衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙の投票日を同一の日に行う選挙を指します。一般的には衆参同時選挙、衆参ダブル選挙とも呼ばれます。
この方式の選挙では、衆議院議員全員と参議院議員の半数が同時に改選されます。これにより、一度に多くの国民の意思を政治に反映させやすいという特徴があります。また、衆議院議員が現職のまま参議院選挙に立候補したり、その逆が可能になったりと、衆参両院の間での立候補者の移動（鞍替え）が行いやすくなるという側面もあります。
投票日は同日ですが、公職選挙法の定めにより、衆議院と参議院では公示日がずれるため、選挙運動期間はそれぞれ異なります。また、公職選挙法第87条により、一人の候補者が同時に両方の選挙に立候補することは認められていません。
同日選挙が行われた場合、次に大規模な国政選挙が行われるのは、参議院は3年後、衆議院もおおむね3年後に総選挙が実施されることが通例であるため、補欠選挙などを除けば、およそ3年間は国政選挙が実施されない期間となる可能性が高まります。過去の例では、同日選挙の約3年後に参議院選挙が実施され、その半年後あたりに衆議院選挙が行われています。
同日選挙は、一般的に投票率が上昇する傾向にあり、特定の政党への組織票に頼るよりも、無党派層や日頃は投票に行かない層（いわゆる浮動票）に支持される政党に有利に働くと見られています。戦後、日本の政治は、積極的な支持ではないものの、与党である保守政党に比較的近い考えを持つ国民が多数を占める一方、必ず投票に行く与党批判層が一定数存在することで、国会が与党と野党でおおむね2対1の勢力バランスとなる「55年体制」が長く続きました。このため、政権を担う与党が衆議院で安定した議席を持ち、世論調査での支持率が低くない状況で同日選挙を実施すれば、普段は投票に行かない潜在的な与党支持層が投票所に足を運ぶため、与党に有利になると考えられています。
さらに、同日選挙が与党に有利とされる理由の一つとして、野党間の選挙協力が進みにくい点が挙げられます。衆議院選挙または参議院選挙が単独で行われる場合、野党各党は候補者を調整し、互いに協力して選挙戦を展開しやすい環境があります。しかし、衆参同日選挙となると、各党が衆議院と参議院の両方で多くの議席獲得を目指すため、協力体制を築くことが困難になる傾向があります。過去に実施された2回の衆参同日選挙では、いずれも野党第一党や第二党が議席を減らす結果となっています。
特に、参議院選挙は衆議院選挙に比べて投票率が低い傾向にあるため、同日選挙による投票率の上昇が参院選の結果に与える影響は大きいとされています。また、衆議院選挙の方が国民の関心を集めやすく、本来なら参議院候補の応援に回るべき衆議院議員が自身の選挙活動に注力しがちになることから、与党内、特に参議院の幹部からは同日選挙への反対意見が出ることが少なくありません。
1994年に衆議院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと変わったことも、同日選挙への見方に変化をもたらしました。中選挙区制は候補者個人の後援会組織が重視され、「人を選ぶ選挙」の色合いが濃く、自民党の有力議員は派閥ごとに競いつつも、同日選挙では連携して参議院候補を支援しました。一方、現行の小選挙区制は「政党を選ぶ選挙」という側面が強く、地盤が固まっていない若手議員も少なくありません。このため、同日選挙になっても、衆議院選挙で生まれた勢いがそのまま参議院選挙に波及しにくいのではないか、という見方も存在します。
また、制度変更後の同日選挙では、有権者は衆議院小選挙区、衆議院比例代表区、参議院選挙区、参議院比例代表区の最大4枚の投票用紙に記入することになります（最高裁判所裁判官国民審査も加わると5枚）。この点の複雑さや、有権者が衆参で異なる政党に投票する「バランス感覚」を発揮する可能性を理由に、同日選挙の実施を避ける判断がなされた例もあります。
衆参同日選挙を実施するにあたっては、衆議院議員と参議院議員の任期満了日が異なることが多いため、衆議院を解散して選挙期日を合わせる必要があります。日本国憲法第54条第1項および公職選挙法第31条第3項は、衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に総選挙を行わなければならないと定めています。また、参議院通常選挙の期日も公職選挙法第32条で細かく規定されており、これらの法令に基づいて日程上の調整が行われます。衆参同日選挙を目的とした衆議院解散の合憲性については裁判で争われたこともありますが、最高裁判所はこれを無効としない判断を示しています。
同日選挙にはいくつかの問題点も指摘されています。例えば、衆議院と参議院の構成が似通ってしまう可能性や、衆議院解散から投票日までの間、改選予定の参議院議員が選挙活動を行うことで、事実上、国会議員が参議院の非改選議員のみとなり、緊急時に国会での決議が難しくなる政治空白が生じるリスクがあるといった理由から、違憲ではないかという議論が存在します。これに対し、衆参それぞれで異なる選挙制度を採用していることによって、両院の構成にある程度の多様性が保たれることや、緊急時には参議院の非改選議員のみで緊急集会を開くことが可能である（ただし、これは衆議院解散時に限られます）といった反論もあり、合憲とする見解もあります。
また、複数の異なる選挙制度（衆議院の小選挙区・比例代表、参議院の選挙区・比例代表など）の選挙が同時に行われるため、有権者にとって投票方法が複雑で分かりにくいという指摘があります。過去の同日選挙では、衆議院中選挙区、参議院選挙区、参議院全国区または比例代表など、複数の選挙制度が同時に行われました。特に参議院の比例代表選挙は制度変更を重ねており、現在の制度では、政党名か候補者名のいずれかを記入できる非拘束名簿式と、特定の候補者名では投票できず政党票として扱われる特定枠が混在しており、衆議院の比例代表（政党名のみ）と同時に行われることで、有権者の混乱を招く可能性が指摘されています。
衆参同日選挙は、これまでに日本の政治史で2回実施された例があります。いずれの場合も、当時の与党であった自由民主党が選挙で圧勝しています。特に1980年の同日選挙は、「ハプニング解散」から大平正芳首相の急死を経て「弔い選挙」の様相を呈するという異例の選挙戦となりました。
なお、投票日が数日異なるのみのケースを「変則衆参同時選挙」と呼ぶこともあります。過去に2例ありますが、現在では国政選挙の投票日を日曜日とすることが慣例となっているため、ほぼ起こりえないと考えられます。これらの変則的な選挙では、同日選挙とは対照的に、与党が敗北する結果となっています。
この方式の選挙では、衆議院議員全員と参議院議員の半数が同時に改選されます。これにより、一度に多くの国民の意思を政治に反映させやすいという特徴があります。また、衆議院議員が現職のまま参議院選挙に立候補したり、その逆が可能になったりと、衆参両院の間での立候補者の移動（鞍替え）が行いやすくなるという側面もあります。
投票日は同日ですが、公職選挙法の定めにより、衆議院と参議院では公示日がずれるため、選挙運動期間はそれぞれ異なります。また、公職選挙法第87条により、一人の候補者が同時に両方の選挙に立候補することは認められていません。
同日選挙が行われた場合、次に大規模な国政選挙が行われるのは、参議院は3年後、衆議院もおおむね3年後に総選挙が実施されることが通例であるため、補欠選挙などを除けば、およそ3年間は国政選挙が実施されない期間となる可能性が高まります。過去の例では、同日選挙の約3年後に参議院選挙が実施され、その半年後あたりに衆議院選挙が行われています。
同日選挙は、一般的に投票率が上昇する傾向にあり、特定の政党への組織票に頼るよりも、無党派層や日頃は投票に行かない層（いわゆる浮動票）に支持される政党に有利に働くと見られています。戦後、日本の政治は、積極的な支持ではないものの、与党である保守政党に比較的近い考えを持つ国民が多数を占める一方、必ず投票に行く与党批判層が一定数存在することで、国会が与党と野党でおおむね2対1の勢力バランスとなる「55年体制」が長く続きました。このため、政権を担う与党が衆議院で安定した議席を持ち、世論調査での支持率が低くない状況で同日選挙を実施すれば、普段は投票に行かない潜在的な与党支持層が投票所に足を運ぶため、与党に有利になると考えられています。
さらに、同日選挙が与党に有利とされる理由の一つとして、野党間の選挙協力が進みにくい点が挙げられます。衆議院選挙または参議院選挙が単独で行われる場合、野党各党は候補者を調整し、互いに協力して選挙戦を展開しやすい環境があります。しかし、衆参同日選挙となると、各党が衆議院と参議院の両方で多くの議席獲得を目指すため、協力体制を築くことが困難になる傾向があります。過去に実施された2回の衆参同日選挙では、いずれも野党第一党や第二党が議席を減らす結果となっています。
特に、参議院選挙は衆議院選挙に比べて投票率が低い傾向にあるため、同日選挙による投票率の上昇が参院選の結果に与える影響は大きいとされています。また、衆議院選挙の方が国民の関心を集めやすく、本来なら参議院候補の応援に回るべき衆議院議員が自身の選挙活動に注力しがちになることから、与党内、特に参議院の幹部からは同日選挙への反対意見が出ることが少なくありません。
1994年に衆議院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと変わったことも、同日選挙への見方に変化をもたらしました。中選挙区制は候補者個人の後援会組織が重視され、「人を選ぶ選挙」の色合いが濃く、自民党の有力議員は派閥ごとに競いつつも、同日選挙では連携して参議院候補を支援しました。一方、現行の小選挙区制は「政党を選ぶ選挙」という側面が強く、地盤が固まっていない若手議員も少なくありません。このため、同日選挙になっても、衆議院選挙で生まれた勢いがそのまま参議院選挙に波及しにくいのではないか、という見方も存在します。
また、制度変更後の同日選挙では、有権者は衆議院小選挙区、衆議院比例代表区、参議院選挙区、参議院比例代表区の最大4枚の投票用紙に記入することになります（最高裁判所裁判官国民審査も加わると5枚）。この点の複雑さや、有権者が衆参で異なる政党に投票する「バランス感覚」を発揮する可能性を理由に、同日選挙の実施を避ける判断がなされた例もあります。
衆参同日選挙を実施するにあたっては、衆議院議員と参議院議員の任期満了日が異なることが多いため、衆議院を解散して選挙期日を合わせる必要があります。日本国憲法第54条第1項および公職選挙法第31条第3項は、衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に総選挙を行わなければならないと定めています。また、参議院通常選挙の期日も公職選挙法第32条で細かく規定されており、これらの法令に基づいて日程上の調整が行われます。衆参同日選挙を目的とした衆議院解散の合憲性については裁判で争われたこともありますが、最高裁判所はこれを無効としない判断を示しています。
同日選挙にはいくつかの問題点も指摘されています。例えば、衆議院と参議院の構成が似通ってしまう可能性や、衆議院解散から投票日までの間、改選予定の参議院議員が選挙活動を行うことで、事実上、国会議員が参議院の非改選議員のみとなり、緊急時に国会での決議が難しくなる政治空白が生じるリスクがあるといった理由から、違憲ではないかという議論が存在します。これに対し、衆参それぞれで異なる選挙制度を採用していることによって、両院の構成にある程度の多様性が保たれることや、緊急時には参議院の非改選議員のみで緊急集会を開くことが可能である（ただし、これは衆議院解散時に限られます）といった反論もあり、合憲とする見解もあります。
また、複数の異なる選挙制度（衆議院の小選挙区・比例代表、参議院の選挙区・比例代表など）の選挙が同時に行われるため、有権者にとって投票方法が複雑で分かりにくいという指摘があります。過去の同日選挙では、衆議院中選挙区、参議院選挙区、参議院全国区または比例代表など、複数の選挙制度が同時に行われました。特に参議院の比例代表選挙は制度変更を重ねており、現在の制度では、政党名か候補者名のいずれかを記入できる非拘束名簿式と、特定の候補者名では投票できず政党票として扱われる特定枠が混在しており、衆議院の比例代表（政党名のみ）と同時に行われることで、有権者の混乱を招く可能性が指摘されています。
衆参同日選挙は、これまでに日本の政治史で2回実施された例があります。いずれの場合も、当時の与党であった自由民主党が選挙で圧勝しています。特に1980年の同日選挙は、「ハプニング解散」から大平正芳首相の急死を経て「弔い選挙」の様相を呈するという異例の選挙戦となりました。
なお、投票日が数日異なるのみのケースを「変則衆参同時選挙」と呼ぶこともあります。過去に2例ありますが、現在では国政選挙の投票日を日曜日とすることが慣例となっているため、ほぼ起こりえないと考えられます。これらの変則的な選挙では、同日選挙とは対照的に、与党が敗北する結果となっています。
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