第6期本因坊戦

第6期本因坊戦：東西の意地がぶつかり合った激闘

第6期本因坊戦は、1950年に開始され1951年に行われました。橋本昭宇本因坊と挑戦者・坂田栄男七段による七番勝負は、橋本が4勝3敗で本因坊位を防衛する結果となりました。しかし、この第6期は単なるタイトル戦にとどまらない、様々なドラマと問題を内包していました。

制度変更の波紋：関西棋院独立問題

第6期から、本因坊戦はそれまでの1期2年制から1期1年制へと変更されました。この変更は、以前から議論されていたものの、日本棋院理事長の唐突な発表が、本因坊であった橋本宇太郎の反発を招きます。橋本自身は1期1年制に賛成だったものの、事前の諒解を得ていなかったことが問題でした。

この騒動をきっかけに、関西棋院の独立問題が再燃します。当時、関西棋院は法人としては独立していたものの、経営的には日本棋院内組織という状態でした。そのため、関西棋院内には、より一層の独立を目指す独立派と、漸進的な改善を求める協調派の2つの勢力が存在していました。運営委員会に出席したのが協調派のみだったことが、内部対立を激化させ、最終的に理事の改選が行われ、協調派が一掃される事態となりました。その後、関西棋院は免状発行権を得て、経営的に完全に独立することを日本棋院に要求するに至りました。

軋轢の中の進行：東西対立の構図

本因坊戦は毎日新聞と日本棋院の契約によって成立しているため、日本棋院から離脱した関西棋院の棋士には参加資格がないという意見も出ました。しかし、毎日新聞は「全日本棋士選手権戦」という建前を重視し、全棋士の参加を望みました。また、日本棋院としても、本因坊位は実力で奪還すべきという考えが多数を占め、予選はそのまま進められることとなりました。

そうした状況下、坂田栄男が挑戦者決定リーグ戦を勝ち抜き、橋本への挑戦権を獲得しました。しかし、橋本は、次期から関西棋院の高段者が参加できるようにならなければ挑戦手合に応じないという条件を提示します。間組社長・神部満之助らの調停により、この条件が受け入れられ、ようやく七番勝負が実現することになりました。

激闘の七番勝負

七番勝負は、橋本には関西棋院の存亡が、坂田には本因坊奪還という日本棋院の期待がかかるという、異様な緊張感の中で行われました。坂田が3勝1敗とリードし、橋本は崖っぷちに立たされます。しかし、第5局で橋本が勝利すると、そこから3連勝で逆転。4勝3敗で本因坊位を防衛しました。特に、第5局の対局中に撮影された両者の写真が「赤鬼青鬼」と呼ばれ、その迫力から後々まで語り継がれることとなりました。

最終局となった第七局、橋本が先番で、中盤まで細碁の局面で進みますが、白128手目が好手となり、橋本が優勢となります。262手まで打ち進められ、橋本が3目半勝ちをおさめ防衛を果たしました。

その後の影響

橋本の防衛は、関西棋院がその存在感を示し、経営的基盤を固める上で大きな意味を持ちました。しかし、本因坊戦における関西棋院の処遇は、その後も問題を残すことになります。

岩本薫は、この七番勝負を「天保6年の本因坊丈和と赤星因徹の争碁とともに、わが国囲碁史上の二大争碁であった」と評しました。第6期本因坊戦は、単なるタイトル戦を超え、囲碁界の歴史に残る重要な一局として、今もなお語り継がれています。

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