赤星因徹

赤星因徹（あかぼし いんてつ）

赤星因徹は、文化7年（1810年）に肥後国（現在の熊本県）で生まれ、天保6年8月28日（1835年10月19日）に26歳の若さで亡くなった囲碁棋士です。幼名は千十郎、後に因誠、因徹と改名しました。

生涯

肥後国菊池郡で赤星四郎兵衛の十男として生まれた因徹は、12歳の時に江戸へ出て十世井上因砂因碩に入門し、因誠と改名しました。15歳頃からは幻庵因碩の指導を受け、18歳で三段に昇段。幻庵の入門時の名前である因徹を名乗るようになりました。天保4年（1833年）に六段、天保5年（1834年）には七段に昇段しています。

名人位を目指す幻庵因碩は、名人碁所に就位していた本因坊丈和を引きずり降ろすため、天保6年7月19日に老中松平周防守宅で開かれた碁会で、丈和と因徹を対戦させました。この碁は3回の打ち継ぎを挟んで4日がかりで打たれましたが、最終的に丈和が勝利しました。この碁は、序盤で因徹が優勢に進めたものの、丈和が挽回したと伝えられています。また、当時重度の肺結核を患っていた因徹は、投了後に吐血したとされており、「吐血の局」として知られています。この対局中、幻庵は寺に依頼して不動明王に護摩を焚かせていたという逸話も残っています。

文政9年（1826年）には、中川順節との間で順節先相先での12局が行われ、結果は打ち分けとなりました。関山仙太夫は、因徹を「七段ながら実力は八段に近い井門の珍物」と評しています。

棋風と評価

因徹は、井上門下の中でも特に才能を高く評価された棋士の一人でした。幻庵因碩の跡目と目され、将来を嘱望されていましたが、26歳という若さで亡くなったため、その才能を十分に発揮することはできませんでした。

著作

因徹は、詰碁を集めた著作も残しています。

玄覧：詰碁集。
手談五十図：詰碁集。

『玄覧』は、天保4年にシチョウ7図、詰碁12図を収録して『棋譜玄覧』として刊行、続いて天保6年に詰碁51図を『手談五十図』として刊行。これを弘化3年(1846年)に十二世井上節山因碩が一冊にして『玄覧』として上梓した。前田陳爾は「詰碁ベストテン」その四に挙げて、傾向は簡潔型と評している。この中には本因坊道策作の珍朧「香餌懸魚」の改作「垂棘屈産失國之形」もある。

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
前田陳爾『詰め碁の神様 2』平凡社 1980年
小堀啓爾、高木祥一「夭逝した棋士たち(第1回 赤星因徹)」（『棋道』誌1998年1月号）
相場一宏、福井正明「碁界黄金の十九世紀(第16回)」（『碁ワールド』誌2003年10月号）

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