第67回都市対抗野球大会

1996年（平成8年）の夏、社会人野球の最高峰を決める第67回都市対抗野球大会が東京ドームで開催されました。例年より遅い8月23日から9月2日までの日程となったのは、この年に開催されたアトランタ夏季オリンピックに、多くの社会人野球選手が日本代表として参加していたためです。

アトランタ五輪後のハイレベルな戦い

アトランタ五輪で銀メダルを獲得した日本代表チームには、社会人野球界からも実力者が多数選ばれていました。メダル獲得の興奮冷めやらぬ中、彼らがそれぞれの所属チームや補強選手として再び都市対抗の舞台に集結。さらに、後にプロ野球で目覚ましい活躍を見せることになる若手選手たちもこの大会に出場しており、その顔ぶれは非常に豪華なものでした。松中信彦（新日鐵君津）、谷佳知（三菱自動車岡崎、JR東海補強）、福留孝介（日本生命）、川村丈夫（日本石油）といった五輪メダリストに加え、入来祐作（本田技研）、大塚晶文（日本通運、本田技研補強）、高橋憲幸（日本石油）、小笠原道大（NTT関東、新日鐵君津補強）、森慎二（新日鐵君津）、礒部公一（三菱重工広島）など、錚々たるメンバーがしのぎを削りました。そのため、この第67回大会は、社会人野球のレベルが極めて高かった大会として、現在でも高く評価されています。大会期間中には、東京ドームのオーロラビジョンで、当時の熱戦や活躍選手の映像が紹介されることさえあります。

新風を吹き込んだ初出場チーム

この大会には、東京都代表の朝日生命と岐阜市代表の昭和コンクリートという2チームが初めて都市対抗の舞台に立ちました。両チームとも、初出場ながら堂々たる戦いぶりで1回戦を突破。2回戦で直接対決が実現し、これを制した朝日生命は、その勢いのまま勝ち進み、準決勝まで駒を進める快進撃を見せ、ベスト4入りを果たすという大きな足跡を残しました。

劇的な決勝戦、本田技研が初優勝

17年ぶりの優勝を目指す広島市代表の三菱重工広島と、創部初の栄冠を狙う和光市代表の本田技研の間で争われた決勝戦は、大会史に残る熱戦となりました。本田技研は、絶対的なエースとして君臨した入来祐作と、切れ味鋭いリリーフを務めた大塚晶文という投手陣を軸に、南関東地区から補強した強打者たちを効果的に配した強力打線を擁していました。対する三菱重工広島も、後にプロ入りする捕手の礒部公一を中心に、横井辰文や補強の田頭欣士、谷川明久といった好打者が揃い、粘り強い攻撃を見せました。

試合は両チームともに譲らず、終盤までもつれる展開となります。特に、本田技研の先発・入来祐作は、三菱重工広島打線から15安打を浴びながらも要所を締め、リードを守り続けました。しかし、8対6で迎えた9回裏、三菱重工広島は2アウト走者なしから猛攻を開始。ランナーをため、土壇場から1点を返して1点差に詰め寄り、さらに一打逆転のランナーを1、2塁に置くという劇的な状況を作り出しました。しかし、ここでマウンドに上がった本田技研のリリーフ、大塚晶文が後続の打者を抑え、ゲームセット。本田技研が8対7という僅差でこの激戦を制し、念願の初優勝を果たしました。惜しくも敗れた三菱重工広島も、最後まで諦めない粘り強い戦いぶりで、観衆に深い感動を与えました。

大会を彩った選手たちと表彰

このレベルの高い大会で特に輝きを放った選手たちには、様々な個人賞が贈られました。最も活躍した選手に贈られる橋戸賞には、本田技研を初優勝に導いたエース、入来祐作投手が選出されました。また、敗れはしたものの、三菱重工広島のセンターとして攻守に活躍した横井辰文外野手には久慈賞が贈られました。初出場でベスト4入りを果たした朝日生命チームは、その奮闘ぶりが評価され小野賞を受賞。若手選手の活躍を称える若獅子賞には、本田技研の田口浩司内野手・指名打者と、日本生命の福留孝介三塁手が輝きました。打撃部門では、日本石油の若林重喜三塁手が首位打者賞、朝日生命の松原和也外野手が打撃賞を獲得しています。

これらの選手の他にも、この大会からは多くの優秀選手が選ばれています。投手では、川村丈夫（日本石油）、木村孔士（日本石油）、長谷川純一（朝日生命）、池添修世（日本生命）、須田喜照（東芝）、森慎二（新日鐵君津）。野手では、捕手に礒部公一（三菱重工広島）、小笠原道大（新日鐵君津・NTT関東）。一塁手にキーナン・ティミィ（本田技研・NTT関東）、下城和男（三菱重工広島）、徳永耕治（日本石油）。二塁手に木下俊生（日本石油）、藤原哲郎（三菱重工神戸）。三塁手に上茂雄（三菱重工広島・NKK）、若林重喜（日本石油）、白井一明（朝日生命）、福留孝介（日本生命）。遊撃手に田頭欣士（三菱重工広島・三菱自動車水島）、楠井公平（三菱重工神戸・小西酒造）。外野手に斉藤真樹（本田技研）、田中泰（本田技研・日本通運）、横井辰文（三菱重工広島）、谷川明久（三菱重工広島・NKK）、中村大伸（朝日生命・NTT東京）、松原和也（朝日生命・東芝府中）、渡辺敦（東芝・日産自動車）。指名打者に田口浩司（本田技研）、岩本敏行（朝日生命）、大谷慎一郎（三菱重工神戸）といった面々が名を連ねています。

また、グラウンドでの熱戦を盛り上げた応援団にも賞が贈られ、最優秀賞は優勝チームの本田技研が獲得しました。優秀賞は朝日生命、敢闘賞は新日鐵君津、そして特別賞は初出場チームの昭和コンクリートがそれぞれ受賞し、大会を華やかに彩りました。

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