第9潜水戦隊 (ドイツ海軍)

ドイツ海軍第9潜水戦隊

第二次世界大戦期、ドイツ海軍が誇るUボート部隊の一翼を担ったのが、第9潜水戦隊（9. Unterseebootflottille）です。この部隊は、大西洋上での海上輸送に対する攻撃、いわゆる通商破壊戦を遂行するために編成されました。

設立と初期の動き

第9潜水戦隊は、1941年10月に創設されました。初代指揮官には、ユルゲン・エステン大尉が就任しました。部隊の本格的な運用開始は翌1942年4月からとされています。準備が進められる中、部隊として初めて戦闘態勢が整った潜水艦U 213は、1942年3月20日には予定されていた拠点、フランスのブレスト港に到着しました。

主要な活動拠点と作戦

1941年10月の創設から1944年9月にかけて、第9潜水戦隊はフランス大西洋岸に位置するブレスト港を主要な母港として活動しました。ブレストはドイツ海軍にとって、大西洋への出撃に有利な戦略的要衝であり、堅固なUボート・ブンカーも整備されていました。この地を拠点に、部隊は主にVII型と呼ばれる様々な派生型のUボートを運用しました。

彼らの最大の任務は、北大西洋を往来する連合国、特に英国向けの、あるいは英国からの護送船団に対する攻撃でした。これは、英国の継戦能力を低下させることを目的とした重要な通商破壊作戦の一環です。部隊は、ブレストが連合国軍によって占領されるまで、この困難な任務に尽力し続けました。

部隊の象徴：笑うソードフィッシュ

第9潜水戦隊を象徴する有名なエンブレムは、「笑うソードフィッシュ」（独: Der lachende Schwertfisch、英: The laughing Swordfish）です。このユニークなマークは、後に部隊を率いることになるハインリヒ・レーマン＝ヴィレンブロック少佐が指揮官に内定した後、部隊章として採用されたとされています。しかし、このマーク自体は、第9潜水戦隊が編成されるよりも前の時期に、レーマン＝ヴィレンブロック少佐が艦長を務めたことで知られるU 96の司令塔に既に描かれていました。

「笑うソードフィッシュ」は、ヴォルフガング・ペーターゼン監督の有名な映画『Uボート』にも登場することから、今日ではUボートのエンブレムの中でも特に広く知られています。

戦隊の終焉

戦況が悪化し、フランスのドイツ軍の立場が困難になるにつれて、ブレストにおける第9潜水戦隊の活動も限界を迎えます。1944年の夏、ブレストは連合国軍によって包囲、占領されることになります。

この状況下で、第9潜水戦隊の残存艦は、戦火を免れたものが全てノルウェーを拠点とする第11潜水戦隊へと再編入されることになりました。ブレストからの最後の出港は、1944年9月4日に行われました。この日、部隊に最後まで留まっていた潜水艦U 256がブレストを後にし、ノルウェーのベルゲンを目指しました。これにより、ブレストを母港とした第9潜水戦隊の歴史は幕を閉じたのです。

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