笹川繁蔵

笹川繁蔵：侠客一代、天保水滸伝に名を刻む

笹川繁蔵（ささがわ の しげぞう）は、文化7年（1810年）に下総国海上郡（現・千葉県香取郡東庄町）で生まれました。幼名は福松、本名は岩瀬繁蔵といい、醤油と酢の醸造を営む商家に育ちます。少年時代は漢学や剣術を学び、相撲に熱中する日々を送りました。

力士から侠客へ

相撲への情熱が抑えきれず、江戸に出て千賀ノ浦部屋に入門し、岩瀬川と名乗りますが、わずか1年ほどで廃業。その後、博打に手を染め、侠客の世界へと足を踏み入れました。同じ千賀ノ浦部屋に所属していた勢力富五郎と共に笹川に戻り、一家を構えます。

飯岡助五郎との対立

笹川一家は勢力を拡大し、飯岡助五郎との間で縄張りを巡る対立が激化します。天保15年（1844年）には、利根川河原で大規模な抗争事件（大利根河原の決闘）が発生。笹川一家は飯岡一家を一時的に打ち破りますが、繁蔵はやむなく故郷を離れることになります。

暗殺とその後

弘化4年（1847年）、笹川に戻った繁蔵は、飯岡を討とうとしますが、子分の裏切りにあい、失意のうちに飯岡側の策略にかかり、笹川のビヤク橋で暗殺されてしまいます。その首は持ち去られ、胴体は行方不明となるという悲惨な最期でした。

繁蔵の死後、飯岡助五郎は密かにその首を埋葬し、手厚く弔ったと伝えられています。一方、笹川一家の残党は仇討ちを試みますが失敗。嘉永2年（1849年）、幕府と飯岡一家によって笹川一家は壊滅させられました。

天保水滸伝として語り継がれる

笹川一家の顛末は、講談師によって『天保水滸伝』としてまとめられ、広まりました。この物語は、浪曲や歌謡曲、映画など様々な形で表現され、繁蔵と助五郎の対立は多くの人々に知られることとなります。

昭和に入り、繁蔵の墓石と胴体が発見され、故郷の笹川に手厚く葬られました。現在、繁蔵の墓は、勢力富五郎や平手造酒の墓と共に、延命寺に静かに佇んでいます。

出自に関する異説

明治時代には、繁蔵の出自に関する異説も現れました。それによると、繁蔵は百姓の孫として生まれ、後に鏑箭馬（やぶさめ）繁蔵の養子になったとされています。実父は赤穂浪士と同族の武士であるという説もあります。

笹川繁蔵は、侠客として、力士として、そして『天保水滸伝』の主人公として、その名は永遠に語り継がれることでしょう。

もう一度検索