平手造酒

平手造酒（ひらてみき）

平手造酒（ひらて みき）は、講談や浪曲で広く知られる『天保水滸伝』に登場する剣客です。実名は平田三亀（ひらた みき）とされています。

生涯

生い立ちについては詳しい記録は残っていませんが、讃岐高松家に仕えた平田伴五の子であるという説があります。剣術修行のため諸国を巡り、天保5年以降は下総国に滞在していました。

天保15年8月6日、飯岡助五郎一家と笹川繁蔵一家の間で行われた「大利根河原の決闘」に、笹川側の用心棒として参戦。全身に11か所の刀傷を負い、壮絶な戦いの末に命を落としました。

物語の中の平手造酒

嘉永3年に発表された実録体小説『天保水滸伝』において、平手は無念流の達人でありながら酒乱で剣の道を誤り、博徒の用心棒として生き、最後は喧嘩で命を落とす浪士として描かれました。この人物像は講談や浪曲を通して広まり、様々な作品で語り継がれています。

実名について

平手の実名については、かつては平田深喜とする説が有力でした。これは子母沢寛の『游侠奇談』で紹介された「御見分書」の記述に基づいています。

しかし、昭和40年頃に浄光川の河川改修工事中に「平田三亀之墓」と刻まれた墓石が発見され、平田三亀が正しい実名であることが判明しました。さらに、平成2年には笹尾家文書『諸国武術御修行者姓名録』に「関口流佐藤雄太門人　讃岐高松家中　平田三亀」という記載が見つかり、讃岐高松出身であることも確定しました。

その後の調査で、平手が浅山一伝流も学んでいたことを示す史料も見つかっています。

流派

平田三亀は、関口流と浅山一伝流を学んでいたことが史料から裏付けられています。一方、『天保水滸伝』に登場する平手造酒は、北辰一刀流千葉周作の門人として描かれることが多く、千葉周作門下の四天王とされることもあります。

三亀が千葉周作の門人であったかどうかを立証する確かな証拠はありませんが、当時の記録や口承から、その可能性を指摘する研究者もいます。

決闘当日の行動

決闘当日、平田三亀はどこから駆けつけたのか、いくつかの説があります。椎名村の加瀬家から駆けつけたという口承や、神代村の尼寺（妙円寺）から駆けつけたという説があります。

一方、当時の記録には、笹川繁蔵が平田三亀を飯岡方の間者と疑い、刀を取り上げていたため、三亀はやむなく粗末な脇差で戦ったという記述も残っています。もしこの記録が事実であれば、他の説は否定されることになります。

墓所

平田三亀の墓は、浄光川近くの心光寺にあります。墓石には戒名と没年月日が刻まれています。

また、東庄町の延命寺には「平手造酒之墓」があります。これは笹川の有志が建立したもので、かつては利根川沿いにあったものを移したとされています。

平手造酒を扱った作品

『天保水滸伝』を題材とした講談、浪曲、映画、小説、テレビドラマなど、数多くの作品に平手造酒が登場しています。時代劇には欠かせない人物として、様々な俳優によって演じられてきました。

主な作品は以下の通りです。

映画：多数（鶴田浩二、天知茂などが演じた作品が有名）
小説：中山義秀『平手造酒』、山本周五郎『花も刀も』など
浪曲歌謡：田端義夫『大利根月夜』、三波春夫『大利根無情』など
テレビドラマ：多数（嵐寛寿郎、鶴田浩二、丹波哲郎などが演じた作品がある）

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