筆島

筆島（ふでしま）

概要

筆島は、東京都大島町に属する無人島であり、伊豆大島の南東海岸からわずか約100mの沖合に位置しています。その最大の特徴は、海面からそそり立つ高さ約30mの岩であり、その形状がまるで筆の先のように見えることから、「筆島」という名が付けられました。

この島は、単なる岩ではなく、地質学的に非常に興味深い成り立ちを持っています。筆島は、伊豆大島が形成されるよりもはるか以前、約240万年前から数十万年前の間に活動していた「筆島火山」の火道が、長年の侵食によって周囲の柔らかい地層が削られ、その結果、硬い岩盤だけが残った「岩頸（がんけい）」と呼ばれる地形です。つまり、かつての火山の中心部が、現在の筆島の姿を形作っているのです。

筆島の対岸に位置する伊豆大島の海岸には、海食によって形成された崖が見られます。この崖には、筆島火山の岩石が露出しており、その中には、マグマが地下から上昇する際に形成された「岩脈」が数多く観察できます。これは、筆島と伊豆大島が地質学的に密接な関係にあることを示す証拠であり、両者がかつて一体の火山活動によって形成されたことを物語っています。

地質学的特徴

筆島は、その特異な形状から、地質学的な興味を引く対象となっています。岩頸は、火山活動におけるマグマの通り道が、周囲の地層よりも硬いために侵食に耐え、残されたものです。この地形は、過去の火山活動の様子を具体的に知るための貴重な手がかりとなります。

また、伊豆大島の海食崖に見られる岩脈は、マグマが地下から地表に向かって移動する過程で、既存の岩石の割れ目に沿って貫入し、冷え固まったものです。これらの岩脈は、火山の噴火メカニズムやマグマの性質を理解する上で重要な情報を提供してくれます。

周辺環境

筆島周辺の海域は、豊かな自然に恵まれており、様々な海洋生物が生息しています。また、筆島を含む伊豆大島は、その独特の地形と生態系から、ジオパークとして認定されており、地質や自然に興味を持つ人々にとって魅力的な観光地となっています。

その他

筆島は無人島であるため、上陸することはできません。しかし、伊豆大島の海岸からその姿を眺めることができ、特に夕暮れ時には、夕日に照らされた筆島のシルエットが幻想的な風景を作り出します。

筆島は、そのユニークな形状と地質学的な特徴から、伊豆大島の景観を代表するランドマークの一つであり、多くの人々を魅了しています。また、日本の渚百選にも選ばれており、その美しさは広く認められています。

脚注

筆島は無人島のため、観光客が上陸することはできません。
筆島は、伊豆大島ジオパークの一部として、保護されています。

参考文献

一色直記 『大島地域の地質』地質調査所（現産業技術総合研究所）、1984年。

関連項目

日本の渚百選

外部リンク

筆島 - 伊豆大島ジオパーク・データミュージアム
みどころマップ 筆島 - 大島町

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