筆界特定制度とは？意味をやさしく解説

筆界特定制度とは

筆界特定制度は、土地の境界（筆界）を明確にするための行政制度です。この制度は、土地の所有権登記名義人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が筆界を特定します。筆界特定登記官は、申請者や関係者から意見や資料を提出してもらい、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地での筆界の位置を特定します。

制度の概要

筆界特定制度は、不動産登記法に基づいており、公法上の境界である筆界を特定するためのものです。土地には、公法上の境界（筆界）と私法上の境界（所有権界）の2種類がありますが、この制度は公法上の境界である筆界を対象としています。

筆界特定制度で決定された筆界は、行政的な判断であるため、境界確定訴訟で争うことも可能です。しかし、専門家が関与して特定された筆界は、境界確定訴訟でも同じ結論となる可能性が高いとされています。

この制度は、2005年（平成17年）に成立した不動産登記法改正により導入され、2006年（平成18年）1月20日に施行されました。

申請手数料

申請手数料は、対象となる土地の価格によって決定されます。土地の合計価格に応じて手数料が変動する仕組みで、例えば、2筆の土地の合計額が4,000万円の場合、申請手数料は8,000円です。

また、手続きの中で測量が必要になる場合があり、その際には測量費用も負担する必要があります。

申請手数料の算出基準は、土地の合計額の2分の1に対して5％を乗じた額に基づき、以下のようになっています。

100万円までの部分：10万円ごとに800円
100万円を超え500万円までの部分：20万円ごとに800円
500万円を超え1000万円までの部分：50万円ごとに1,600円
1000万円を超え10億円までの部分：100万円ごとに2,400円
10億円を超え50億円までの部分：500万円ごとに8,000円
50億円を超える部分：1000万円ごとに8,000円

これらの手数料は、原則として収入印紙で納付します。

申請業務の受任者

筆界特定制度に関する申請業務（相談、書類作成、申請代理）は、以下の資格を持つ者に限定されています。

弁護士（弁護士法第3条）
土地家屋調査士（土地家屋調査士法第3条第1項第4号、第5号、第6号）
司法書士（司法書士法第3条第1項第4号、第5号、第8号）

司法書士が申請代理業務を行うには、法務大臣の認定を受け、簡易裁判所の訴訟代理等関係業務を行うことができる必要があります。さらに、対象となる土地の固定資産税評価額の合計が5600万円以下であることが条件となります。書類作成業務のみであれば、これらの制限はありません。

筆界特定までの期間

筆界特定にかかる期間は、通常半年程度を目安としています。しかし、申請時に提出する資料が不足している場合、1年近く、またはそれ以上かかることもあります。

筆界特定制度によって筆界は特定されますが、その結果に納得できない場合は、境界確定訴訟を提起することができます。境界確定訴訟の結果が筆界特定の結果と異なる場合、筆界特定は無効となります。ただし、境界確定訴訟で最高裁判決まで確定したものは、筆界特定の対象外となります。

制度の長所

筆界特定制度を利用する主なメリットは以下の通りです。

土地の境界が確定し、土地に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
裁判よりも迅速に紛争を解決できる可能性があります。
裁判に比べて費用を抑えることができます。

境界確定訴訟

境界確定訴訟は、土地の境界を確定するための裁判手続きです。筆界特定制度によって筆界が特定されていても、境界確定訴訟を提起することができます。しかし、境界確定訴訟によって確定した境界に対して、筆界特定を申し立てることはできません。最終的な境界確定のためには、境界確定訴訟が必要となる場合もあります。

筆界特定制度