筑前琵琶

筑前琵琶について

筑前琵琶（ちくぜんびわ）は福岡県を起源とする音楽形式で、歴史的には盲僧琵琶の伝統が色濃く反映されています。中世の日本、特に室町時代に九州地方で形成され、文化的な発展を遂げてきました。筑前盲僧琵琶は宗教音楽として始まったものの、明治時代中期には女性の家庭音楽としての地位を確立しました。特に、筑前琵琶は近代琵琶楽の先駆けとして、福岡藩士の娘である吉田竹子の貢献が大いに評価されています。

歴史の背景

筑前琵琶は盲僧琵琶と薩摩琵琶の影響を受け、徐々に音楽スタイルを変化させていきました。薩摩琵琶は武士の教養として発展したのに対し、筑前琵琶はより一般家庭向けの音楽にシフトし、特に女性たちに親しまれるようになりました。明治29年（1896年）、初代橘旭翁が東京で活動を開始し、筑前琵琶の名声を高めました。彼は演奏家の鶴崎賢定や吉田竹子と共に、琵琶の振興に尽力しました。

初代である橘旭翁の死後、筑前琵琶は「橘流」と「旭会」の二つの流派に分かれ、現在でもそれぞれの流派が存在しています。その後、女性奏者による娘琵琶が流行し、嫁入り前の女性たちにとっては習い事として重視されました。多い時で福岡市内には50人もの琵琶の師匠がいたとされています。

音楽の特徴

筑前琵琶の音楽は、薩摩琵琶に比べて全体的に穏やかで、楽器のサイズもやや小ぶりです。楽器は桑材から作られ、表面には桐の腹板が合わせられています。音色はそれぞれの楽器で微妙に異なり、一般に薩摩琵琶よりも柔らかいとされています。また、筑前琵琶は三味線音楽の要素を取り入れ、歌いながら伴奏をするスタイルも特徴的です。

著名な曲には『湖水渡』や『義士の本懐』などがあります。筑前琵琶には四絃と五絃の種類があり、特に五絃は音域が豊かで、全体的に大きめです。冊数に応じた撥もあり、製作や技術の継承は、イタリア人のドリアーノ・スリスを師匠とする弟子たちによって行われています。

現在の筑前琵琶

筑前琵琶は日本の伝統音楽の一部として、今でも多くの人に親しまれています。特に女性奏者の人気が高く、家庭や教育の一環として広く行われています。かつて花柳界には琵琶芸者と呼ばれる演奏者も存在し、琵琶の需要が高まりました。大正時代末期には、琵琶の製造が博多人形と同等の水準に達したとされ、新たな文化の一端を形成しました。

総じて筑前琵琶は、日本の歴史の中で深い文化的背景と独自の発展を遂げ、現在も人々に愛され続けています。

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