筑紫地震

筑紫地震（つくしじしん）について

筑紫地震は、飛鳥時代の後期、特に白鳳時代に九州北部を中心に発生した大規模な地震です。この地震は『日本書紀』に記録されており、震源がほぼ特定されている日本最古の歴史地震とされています。『日本書紀』では、筑紫地震の前後にも地震に関する記述が見られ、特に本地震の約6年後には南海トラフの巨大地震である白鳳地震が発生したことが記録されています。

地震の発生時期と被害

筑紫地震は、天武天皇7年の12月中（西暦679年の1月18日から2月15日の間）に発生しましたが、実際の地震発生日は特定されていません。この地震により、幅約6メートル、長さは約10キロメートルにも及ぶ大規模な地割れが形成され、多くの民家が破壊されました。また、丘が崩れ、その傾斜上にあった家々も影響を受けたが、家人は丘の崩壊に気づかず、翌朝になって初めてその惨状を知り驚いたとされています。

『豊後国風土記』によると、地震によって五馬山が崩れ、各地で温泉が噴出しました。中には間欠泉も含まれていたということです。これらの記録から、地震の影響が広範囲に及んでいたことが伺えます。

また、地震の直前には、特異な現象として臘子鳥（あとり）が天を覆い、天候の変化があったとも伝えられています。このような宏観異常現象は、地震の前兆として考えられる場合があります。

地震の規模と震源

筑紫地震に関しては、河角廣によってその規模はMK = 3.6とされ、これをマグニチュードM = 6.7に換算されています。一方、宇佐美はこの地震のマグニチュードをM = 6.5から7.5の範囲と推定しています。このように、筑紫地震は相応の規模を持っていたと評価されています。

震源断層の発見

1988年に大宰府で行われた遺跡調査の際、研究者たちは上津土塁の一部が滑り落ち、これが8世紀後半に修復された痕跡であることを発見しました。これを契機に、7世紀後半の地震による痕跡が続々と発見されました。1992年には、水縄断層帯にある追分断層上で、7000年間にわたる地震の痕跡が見つかり、特に筑紫地震の痕跡が関連していると考えられています。この水縄断層系は、約20キロメートルの長さを持ち、年間変位が0.1 - 1.0mm程度の正断層であると推定されています。

さらに、2015年には益生田古墳群において、筑紫地震による倒壊の痕跡を持つ円墳が発見され、この地震の重要性が再確認されました。筑紫地震は、九州北部の地震史において、重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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