筒井敬三

筒井 敬三

筒井 敬三（つつい けいぞう、1925年6月24日 - 1959年12月6日）は、昭和中期に活躍した日本のプロ野球選手、およびコーチです。和歌山県海南市に生まれ、捕手として長らくプロの舞台でプレーしました。特に俊足で機敏な捕手という、当時としては珍しいタイプとして知られています。

プロ野球入りと南海での活躍

1946年、筒井氏はグレートリング（現在の福岡ソフトバンクホークスの前身）に入団しました。プロ入り1年目から91試合に出場し、即座にチームの正捕手の座を獲得。堅実な守備と、捕手としては優れた打力を兼ね備え、中心選手の一人として活躍しました。球団は1947年に南海に名称を変更しましたが、筒井氏は引き続き南海ホークスの主力捕手としてグラウンドに立ち続けました。

「三原ポカリ事件」の当事者

筒井氏のキャリアで特筆すべき出来事として、「三原ポカリ事件」の当事者となったことが挙げられます。これは1949年4月14日、後楽園球場で行われた読売ジャイアンツとの試合中に発生しました。この試合は、開幕前に起こった南海のエース別所毅彦投手の巨人への移籍問題（別所引き抜き事件）を引きずり、両球団間に非常に険悪な雰囲気が漂う中で行われた3連戦の最終日でした。試合中、筒井氏が二塁へ走塁した際、巨人の遊撃手・白石勝巳氏への送球を妨害したと、巨人の監督であった三原脩氏が主張。審判がこれを守備妨害と認めなかったことに激昂した三原監督は、なんと筒井氏の頭を殴打しました。この前代未聞の暴力行為は大きな波紋を呼び、「三原ポカリ事件」としてプロ野球史に刻まれています。

この1949年シーズン、筒井氏は事件を経ながらも打率.274、66打点を記録し、キャリアの中で最高の成績を残しました。その後の南海時代もレギュラー捕手としてチームを支え、1953年と1955年にはプロ野球オールスターゲームにも選出され、出場しています。

複数球団を渡り歩く

1956年、筒井氏は高橋ユニオンズへ移籍しました。しかし、翌1957年に高橋ユニオンズが大映スターズに吸収合併され、大映ユニオンズが誕生したことに伴い、大映ユニオンズの所属となりました。さらに1958年には、大映ユニオンズと毎日オリオンズが合併して東映フライヤーズが誕生。筒井氏は東映フライヤーズへ移籍しました。移籍を繰り返しましたが、東映ではわずか8試合の出場にとどまり、この年限りで現役を引退しました。

コーチ就任と突然の訃報

現役引退後、筒井氏は1959年に東映フライヤーズの二軍バッテリーコーチに就任し、指導者としての道を歩み始めました。しかし、その年の12月6日、東京都世田谷区新町にあった東映の球団寮で発生したガス漏れ事故に巻き込まれ、中毒死するという悲劇的な最期を遂げました。わずか34歳という若さでした。

選手としての特徴と記録

筒井氏は、捕手としては珍しい俊足と機敏さを兼ね備えていました。また、打席に立つ相手打者に対して、小声で話しかけて集中力を乱すのが非常に巧みでした。このプレースタイルは、後に南海に入団し、「ささやき戦術」を得意として球史に名を残した野村克也氏のルーツの一つではないかとも言われています。

プロ野球選手として、1957年6月5日には史上39人目となる通算1000試合出場を達成しています。オールスターゲームには2回（1953年、1955年）出場しました（1951年、1952年も選出されましたが、出場はありませんでした）。

短くも波乱に富んだ筒井敬三氏の生涯は、プロ野球の歴史において語り継がれるエピソードと共に記憶されています。

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